10月4日、日本未公開の台湾映画の名作・話題作を紹介する「台湾文化センター 台湾映画上映会2025」の第7回が、台湾文化センター(東京・虎ノ門)で開かれた。この日上映されたのは、『優雅な邂逅』(2024)。『最愛の夏』(1999)が東京国際映画祭でグランプリのほか3部門を独占し、カンヌ映画祭監督週間にも招待された、チャン・ツォーチ監督の最近作だ。パンデミックに覆われた世界で生きる人々をモノクロの映像で描き出した。

 上映後にはチャン・ツォーチ監督がオンラインで、会場には映画評論家の宇田川幸洋氏が登壇したトークイベントが開催された。聞き手は上映会キュレーターのリム・カーワイ監督が務めた。

『優雅な邂逅』ポスター

『優雅な邂逅』

古びたアパートに祖父と一緒に住むアシュン。彼が心臓移植手術を受けている最中にもとの自宅は火事になり、家族の人生は大きく変わってしまった。パンデミックが発生し、日常生活が様々に制約を受けている中、向かいの部屋に外国から来た美女が引っ越してきたり、親友に危ないビジネスに誘われたり、元カノが突然訪ねてきたり……。パンデミック時代における人間関係を解きほぐし、不完全な人生の中で運命を変える希望を描き出す傑作。金馬奨2024新人俳優賞受賞。

監督:チャン・ツォーチ/出演:リン・チェンシュン、レイ・ジエシー、ワン・シャオユエン、ヨウ・シェンフォン/2024年/127分/台湾/原題:優雅的相遇/©Chang Tso Chi Film Studio

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コロナ禍を楽観的に捉えたかった

リム・カーワイ(以下、リム) 本作はコロナ禍を正面から描いた、非常に力強い作品だと感じました。このテーマを選ばれた理由についてお聞かせください。

©台湾映画上映会2025

チャン・ツォーチ(以下、チャン) 実はコロナ禍になる前、別の作品を撮っていたのですが、撮影を始めてすぐにパンデミックに見舞われました。私にとって人生で非常に苦しい経験で、家を売るような事態にもなりました。コロナ禍は、人と人との距離を引き裂いてしまう。そんな中、取り壊される寸前の古いアパートに出会ったのです。それを見て、脚本を書こうと決めました。

 この作品を作り始めた時は、コロナ禍がどうしようもない時だったんですが、私はできるだけ楽観的にこの状況をとらえたいと思ったんです。辛いことはすべて過去に流してしまえばいいという気持ちをタイトルに込めています。

 本作もそうですが、私の作品は常に台湾でも貧しい層の人々を描いています。彼らに強烈な「生命力」を感じるからです。彼らにとって、生き続けること自体が非常に重要な意味を持っています。私自身も貧しい階層の人間だと思っているので、彼らを描くことは、自分自身を投影することでもあります。