また、「危機管理投資」によって世界共通の課題を解決できる製品・サービス・インフラを生み出せた場合には、国際展開を行うことによって「成長投資」にもなる。

 自然災害でもサイバー攻撃でも、事前の備えにかかるコストより、復旧にかかるコストと時間の方が膨大である。「危機管理投資」の恩恵は、これから生まれる未来の納税者にも及ぶものだ。「成長投資」は、雇用を生み、個人や企業の所得を増やし、消費マインドを改善させ、結果的には税収増を目指すものだ。

「改革」から「投資」への転換

 この私のプランを『サナエノミクス』と称すると少し間抜けな響きで残念だが、基本路線は『ニュー・アベノミクス』である。「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「危機管理投資・成長投資」を総動員してインフレ率2%を目指すものだ。アベノミクスの第3の矢は「民間活力を引き出す成長戦略」で規制緩和など「改革」が主だったが、私はここを「投資」に変える。第2の矢の「機動的な財政出動」は、あくまでも緊急時の迅速な大型財政措置に限定するので、第3の矢の「危機管理投資・成長投資」とは別物だ。

ADVERTISEMENT

 そして、インフレ率2%を達成するまでは、時限的にプライマリーバランス(PB)規律を凍結して、戦略的な投資にかかわる財政出動を優先する。頻発する自然災害や感染症、高齢化に伴う社会保障費の増大など困難な課題を多く抱える現状にあって、政策が軌道に乗るまでは、追加的な国債発行は避けられない。

画像はイメージです ©years/イメージマート

 こう述べると「日本国が破産する」と批判される方がいる。しかし、「日本は、自国通貨建て国債を発行できる(デフォルトの心配がない)幸せな国であること」「名目金利を上回る名目成長率を達成すれば、財政は改善すること」「企業は借金で投資を拡大して成長しているが、国も、成長に繋がる投資や、将来の納税者にも恩恵が及ぶ危機管理投資に必要な国債発行は躊躇するべきではないこと」を、強調しておきたい。

※本記事の全文(約7500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(高市早苗「総裁選に出馬します!」)。この他にも、「文藝春秋PLUS」では下記の記事をご覧いただけます。
・国会議員の矜持
・必需品は国内生産・調達が基本
・情報通信機器の省力化が急務
・深刻な「中国リスク」
・中国への技術流出に歯止めを
・日本に強みがある技術を伸ばす