「(生活レベルは)なんならいまがいちばん下げてますね。これがいちばん最低です、私の。いちど一般職で働く同世代より稼げることを知ったら、もう無理ですね」

 新宿で4年以上「立ちんぼ」を続ける未華子(仮名・取材当時32歳)。立ちんぼ1本で生計を立てる、彼女の人生設計図とは――。ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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カラダを売ることなんて何とも思わない

 日が傾きかけたころ、窓の外から「ワン」と吠える愛犬の声がした。愛犬は、インタビューの邪魔になるのではとの未華子の計らいでベランダに出してくれていた。

 どんよりとした鉛色に空は広く覆われている。ベランダに出て、愛犬の様子をうかがうついでにシトシトと降り続く冷たい小雨を確認すると、「今日は出勤できないな」と未華子がつぶやいた。路上に立たないとなると当然、今日の実入りはない。

──やっぱり晴れの日しか立たないんだ。

「雨の日は基本、立たないですね」

──路上売春って、天気に左右されての綱渡りなわけね。でも、立てば何とかなるって頭があるから気軽に闇金で借りることもできる、と。

「そうなんですよ。ぶっちゃけ数千円でも持ってれば1週間とか生きられるじゃないですか」

──公園は、いまコンスタントに月いくらぐらい稼げるの?

「50(万円)くらいは余裕で稼げます。だって、1日5万を10日やればいいだけじゃないですか」

──でも、若い子たちが大久保病院側に来る去年の夏前まではもっと稼げたわけだよね。

「まあそうですね。業界自体が暇だとはみんな言いますね。でも、いくら細くてサービス良くて愛嬌が良くても暇な子もいますし。逆に見た目微妙でも公園だと売れる子もいるんですよ。私も30歳を過ぎたあたりから稼ぎは少し減りましたけど、ぶっちゃけ容姿は関係ないですね」

──公園で売れるコツがある。