中国に渡航する際、あるいは中国国内と通信する際には、「こちらのやり取りはすべて監視されている」という前提で行動する必要があります。これは決して脅しでも過剰反応でもなく、実際に現地で活動している多くの日本人や専門家が体感している、現実的なリスクです。
まず、中国国内では、ホテルや商業施設などでの会話が盗聴されている可能性が高く、メール・電話・ファックスといった通信手段もAIによってモニタリングされているといわれています。
つまり、物理的に中国にいるときだけでなく、日本から中国に向けた通信も含め、「何をいったか」「何を送ったか」が逐一監視されているつもりでいなければなりません。
特に、政府批判や体制に対するネガティブな発言は、何気ない冗談のつもりでも重大なリスクとなります。実務の現場では、私は必ず「中国では政府批判につながる発言は一切控えてください」と事前レクチャーしています。
「スマホ」「パソコン」の中身まで調べられる
さらに、2024年から中国では新たな法制度が整備され、「反スパイ法」や「刑事手続法」の強化が進められました。その中でも特筆すべきは、電子機器に対する検査権限の拡大です。これにより、空港の入国審査やセキュリティーチェックの際に、スマートフォンやパソコンの中身まで詳細に調べられる事例が急増しています。
実際、地方の国際空港でも検査にかかる時間が長引く傾向があり、デバイス内の画像や文書ファイルの中に“当局にとって不適切”と判断されるものがあれば、その場で提出を求められることがあります。
特に注意すべきなのは、習近平国家主席を揶揄する“くまのプーさんの画像”や、中国で規制されている宗教・政治的な表現、さらには偶然、ダムや軍事施設が写り込んでしまった風景写真などです。こうしたものは、たとえ日本国内で保存されたものであっても、「持ち込まれた場所が中国国内である」という事実だけで、逮捕の理由になります。