空港での撮影が禁じられている理由は、施設の構造や防犯設備が記録されてしまうことによるセキュリティーリスクがあるからです。その行為がスパイ活動やテロ準備行動と見なされる可能性があるということです。
一例を挙げると、私の知人の元外交官が、民間人としてアフリカ某国を訪問した際、空港内で何気なく写真を撮ってしまったことがありました。そのとき、すぐに空港職員に職務質問され、「何を撮ったのか」「画像を見せろ」と問い詰められたそうです。
彼が写真を見せたところ、職員は「こっちへ来い」と彼を空港の端へ連れて行き、パスポートの提示と画像の消去を要求してきたのです。その後、賄賂(わいろ)も要求してきました。
「カメラで撮らないこと」が最善策
このような状況は、アフリカや中東、東南アジアなどでは決して珍しいことではありません。空港や警察、軍関係者が“違反行為”を口実にして賄賂を求めてくるケースは多く、軽率な行動が思わぬトラブルに発展するリスクをはらんでいます。
この元外交官はとっさに冷静な対応を取り、「日本大使館に確認させてくれ」と申し出たところ、職員の態度が一変し、「(面倒だから)行っていい」と、その場から解放されたそうです。この「大使館に確認する」という一言が、賄賂要求への有効な対抗策となることもあるのです。
本来であれば、空港内での撮影は「身柄拘束」の理由にもなり得ます。賄賂目的であろうと、違反行為を盾にされた場合には、その場から自由に動けなくなる可能性が高くなります。つまり、「撮らないこと」が最善の対策です。
私が官公庁や企業で講師を務めた際にも、こうした事例を紹介しながら、「海外では空港をはじめ、港湾、橋梁(きょうりょう)、ダムなどの重要施設は“撮影禁止が原則”である」と強調しています。
記念撮影をする場合は、周囲の状況をよく観察しましょう。「自分だけがカメラを構えている」状況は、危険信号の一つです。また、撮影禁止のマークや注意書きが出ていないかを必ず確認し、それでも不安であれば、撮影を控える判断が重要です。