私が強調したいのは、「知らなかった」では済まないということです。中国では、本人の意図の有無に関係なく、「国家の安全を脅かす」と当局に判断されれば、それだけで身柄を拘束されてしまうリスクが現実に存在します。
中国に“日本の常識”を持ち込んではならない
したがって、中国に入国する前には、スマートフォンやパソコン内のデータを完全に消去するか、まっさらなデバイスを使用するのが鉄則です。どうしても古い機器を使うのであれば、画像やドキュメントの中で不安のあるものは事前に削除しておくことが最低限の自己防衛です。
なお、私は現職を退いたあと、危機管理会社に所属していた時期がありました。その際、中国やロシアに出張する話が出たとき、私ははっきりと「行くなら辞めます」と会社に伝えました。
なぜなら、公安捜査官として長年、中国やロシアの情報機関と関わってきた私の顔は、当然ながら彼らのデータベースに登録されているはずで、入国すれば拘束・監禁のリスクが極めて高いからです。結果的にその話は立ち消えになりましたが、今も私は「中国・ロシアには一生行かない」と決めています。
中国渡航時の最低限の心得は以下になります。
1 通信内容は常に監視されていると心得ること。
2 政府批判やそのように受け取られそうな言葉は口にしない。
3 電子機器の中身を精査し、不要なデータは消去する。
4 「悪気がなかった」では通用しない法体系であることを理解する。
中国に渡航する・中国とビジネスをするということは、“彼らのルールの中に入る”ということです。だからこそ、日本の常識をそのまま持ち込んではならないのです。
「空港での記念撮影」はNG
海外旅行や出張の際、つい空港での記念撮影をしたくなる方も多いと思いますが、実は「空港での撮影」は多くの国で原則NGであるということをご存じでしょうか。
日本国内では、成田空港や羽田空港で写真を撮っても、とがめられることはほとんどなく、観光地と同じ感覚で記念撮影をする人も多いでしょう。しかし、海外では事情がまったく異なります。空港や港、ダムなどの重要インフラ施設は、戦争やテロの際に真っ先に狙われる「軍事的ターゲット」でもあるため、撮影が厳しく制限されているのです。