日本と海外では“常識”が全く違う

一方で、なぜ、日本ではこれほどまでに撮影が“自由”なのかという疑問も残ります。

日本の空港や鉄道施設では、防犯カメラの位置や警備態勢が無防備に露出しています。観光客が写真を撮り放題で、しかも、SNSなどで公開されている現状は、テロ対策やスパイ対策の観点からは非常に脆弱であるといわざるを得ません。

プロのスパイやテロリストは、写真や映像から防犯カメラの機種や配置、警察官や警備員の配置などを読み取る能力を持っています。実際に横須賀の自衛隊基地では、ドローンを用いた撮影による情報流出が問題視されたこともありました。

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現状、日本にはこうした行為を明確に規制する法律がなく、取り締まりの難しさもあるのが実情です。しかしながら「他国では常識的にNGな行為」が、日本では許容されているという認識のギャップを知っておくことは、国際感覚を持った安全行動の第一歩です。以下、海外空港での「やってはいけない」チェックリストです。

1 空港・港湾・ダムなど重要施設では基本的に撮影禁止。
2 記念撮影の前に“周囲の状況”と“表示”を確認。
3 職員に職務質問を受けたら、「大使館に確認する」と伝える。
4 日本の常識をそのまま海外に持ち込まない。

海外では、「知らなかった」「記念撮影のつもりだった」では済まないケースが数多くあります。安全と自由を守るためには、まず、自分自身の無意識な行動にこそ目を向けることが大切です。

勝丸 円覚(かつまる・えんかく)
元公安警察
1990年代半ばに警視庁に入庁し、2000年代はじめから公安・外事分野での経験を積んだ。数年前に退職し、現在は国内外でセキュリティコンサルタントとして活動している。TBS系日曜劇場「VIVANT」では公安監修を務めている。著書に、『警視庁公安部外事課』(光文社)がある。
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