事実より「人の思い」、人の感情にゆだねることで成り立っている職業――自らの仕事をそう説明する柴咲コウ。だがその境地にたどり着くまでには長い年月が必要だった。5年ぶりの主演ドラマ『スキャンダルイブ』(11月19日よりABEMAにて無料配信)の撮影を振り返りつつ、初めて登場した週刊文春『原色美女図鑑』(11月20日号)、さらには自らの“仕事”について語った。(全4回の3回目/#1#2#4を読む)

「スキャンダルイブ」©AbemaTV,Inc,

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「なんだよ、この野郎!」ってエネルギーにする

――ちなみに率直なところ、柴咲さんご自身は「週刊誌」に対してどんな印象をお持ちですか?

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柴咲 それはまぁ、私みたいな仕事をやっている人に聞くのは愚問かもしれないですね(笑)。

――週刊誌記者のお前が言うなという話ですが、心無い記事もありますからね……。

柴咲 「悪意あるよね」、みたいなね。やたら人相悪い写真使ったり(笑)。「あえてやってるでしょ、これ」って。

――精神を揺さぶられることもありますか。

柴咲 いや、栄養にしかならない。私は反骨精神の塊だから「なんだよ、この野郎!」ってエネルギーにする。そこは強いかなぁ(笑)。それと結構真面目なので、つつかれて「あ、ここは図星だな。痛いな」とハッとしたら素直に改善します。「より良い結果をちゃんと出していく、以上!」って感じ。

「柴咲コウがディレクターを務めるサステナビューティーファッションブランドMES VACANCES(ミヴァコンス)提供」

必要とされているのは事実ではない

――「糧にしていく」姿勢は、芸能界に入られてからずっと?

柴咲 反論したいと思った時期もありましたよ、20年以上遡れば。でもある時「事実が求められているわけじゃないんだな」と気付いたんです。だったらむきになって対抗してもエネルギーの無駄だから、ほっといた方がいいかって。

――「必要とされているのは事実ではない」、重い言葉ですね。面白おかしさ重視というか、大衆の興味関心を掻き立てることが優先される。

柴咲 事実より「人の思い」なんですよね。まして私たち芸能人は“夢を売る職業”とも捉えられるわけで、「違うんです、本当の私はこうなんです!」とは主張しづらいし、それを言っちゃうのも野暮なのかなぁって(笑)。感情の機微、繊細なニュアンスを物語や音楽に変換して見せていく仕事だから、数学や物理のように確固たる答えがあるわけじゃない。人の感情にゆだねることで成り立っている職業なので。