注目すべきは小見出しで「共犯? 男浮かぶ」とある記事。詐欺・横領の犯行手口と行動が詳しく書かれている。
“全面的に信頼されていた”Oの巧妙な手口
Oは40年から7年5カ月間、山科支店に勤務。定期預金と通知預金係を担当。47(1972)年10月からは一般行員で最上位の地位である事務決裁者になり、役席(店次長、店長代理)から全面的に信頼されていた。
1. 蝋などを使って古い伝票などから役席の印を転写
2. 架空の預金者の支払伝票にその印を押して偽造。出納係から金を引き出す
3. 実在の預金者が定期預金の満期で当座預金へ変更したように見せかけ、支払伝票と入金伝票を同時に偽造
4. 定期預金証書を偽造
――など、巧妙な手口を駆使。さらに定期預金の入金・引き出しの場合、預金者ナンバー・金額・名前を本店に送り、コンピューターに入れなければならないことから、金を引き出した後の“穴”は別の預金者の金を充て、コンピューター操作面では金額が合致するように細工していた。
Oは預金係としては超ベテラン。日曜、祝日などにも残業として出勤。その間に役席印を転写し、業務の多忙な5、10、15日の“節日”を狙って偽造伝票を出納係に提出して転写印など偽造がばれないようにしていた。
捜査二課はOの立ち回り先とみられる京阪神、東京、九州地方を捜査。44(1969)年から昨年初めまでに、京都市の貴金属ブローカーからダイヤの指輪13個(計約750万円相当)を買っていたことが分かった。さらに2月10日、京都市中京区の知り合いの美容院でヘアピースを買った際、「遠くへ旅行する」と言っていたことが判明。その後、5月10日に京都市内で走行中のタクシーに乗っているのを同僚が見かけた以外は足どりが途絶えたまま。行方は依然分かっていない。
そして、記事は“男の存在”を示唆する。
同課はあまりにも金額が大きすぎることや巧妙な手口などから、Oの単独犯行とみておらず、これまでの捜査で、Oが親しくしていた京都市東山区の燃料販売商にかなりの金額を渡しているのを突き止めている。また、赤いスポーツカーに乗って度々、山科支店に迎えに来ていた若い男(山口県出身)なども捜査線上に浮かんでおり、身辺捜査を急いでいる。
