捜査二課は男の身元も割り出していた。記事の最後には銀行の管理体制に触れた監督官庁の責任者の談話がある。

 ポスト管理に問題

 

 首藤康雄・近畿財務局理財部長の話

 

 1人の女子行員の犯罪にしてはあまりに金額が大きく、驚いている。6年間も預金係というポストに置くという人事の停滞が、こんな大胆な犯罪を生む結果になったと思う。また、それをチェックできなかった管理体制に問題があるのは明らかで、この点を改めるよう銀行当局に指示した。

 京都は別の面でも「年間9千万円の穴 知らなかった銀行側 帳じりさえ合えば 『部下を信頼』がアダに」の見出しで銀行の体制上の欠陥を指摘した。同じ日付の大阪朝日新聞(以下、大阪朝日)も「あいまいな管理責任」と、銀行の責任を取り上げた。また、東京毎日新聞(以下、東京毎日)は「Oから多額の金を融通されていたらしい不審な男が捜査線上に浮かんでいる」とした。

逃亡先を巡ってさまざまな情報が(京都新聞)

「表面とは違った派手な男関係」

 9月26日付京都夕刊は、Oが知人の男の本籍地の山口県方面に潜伏しているのではないかとみて捜査員を派遣したと報道。次のように伝えた。

ADVERTISEMENT

「数年前から若い男が度々Oに電話をかけてきていた。その度にOは勤務後、若い男が運転する乗用車に乗って出かけていたことが分かった」

「Oは42歳まで独身で、行員の間では『無口で堅い人』として通っていたが、若い男のほか、東山区の燃料商やバクチ好きの男(広島県)ら数人の男が捜査線上に浮かんでおり、表面とは違った派手な男関係が事件の“カギ”になるとみられている」

 後から考えると「若い男」と「バクチ好きの男」は同一人物で「広島県」は誤りだったようだ。同じ京都の1面3行コラム「三十六峰」は「一女子行員の4億5千万円もの詐取に気づかぬ銀行というところは。お堅い中にも抜け穴」と記述。翌9月27日付朝刊1面コラム「凡語」も事件を取り上げた。

「やっぱり人間、信用が大切だーと逆に思った。なぜならば、この行員にもし信用がなかったら、とても女手一つで4億5000万円もの穴を開けられるはずはなかった」

「全く“人間の信用”ほど空恐ろしいものはない」

事件は1面コラムでも取り上げられた(京都新聞)

 いずれも事件をどう位置付けていいか、見定めかねている印象だ。

 そんな中、京都は9月30日付朝刊で「若い男」との一問一答を「大金動かす“下関の男友だち”」の見出しで載せた。男が語ったことは――。(つづく)

次の記事に続く 「騙し取った金はほぼ男に貢いだ」銀行員女性が“10歳下”元タクシー運転手に惚れ込み巨額横領…男の“あきれた使途”とは