火炎瓶が投げ込まれる事件、放火も発生
会期中には、会場内の港・エキスポポートに停泊中の展示船に過激派の青年が火炎瓶を投げ込み、乗員に重軽傷を負わせるという事件や、やはり過激派の放火による火災も2件発生している。1月18日の閉会式が一般の観客を入れずに行われたのも、会場となったポートサイドシアターが狭かったことに加え、警備上の理由からだった。
その閉会式の終了時には、サバニと呼ばれる丸木をくりぬいた沖縄伝統の船やヨットが、やはり沖縄に伝わる船出の歌である「だんじゅかりゆし」の合唱のなか船出するという演出があった。その日の夕方6時半から会場内の「夕陽の広場」で行われたお別れの会「EXPO'75 フェアウェルショー」では、パビリオンや海洋博協会の職員だけでなく観客も参加し、かがり火が焚かれるなか、人々が輪になってカチャーシーを踊った。カチャーシーもまた、祝宴や祭りの終わりなどに即興で踊られる沖縄の伝統文化である。
こうして郷土色を反映した趣向で人々が別れを惜しむなか、夜は更けていった。一般客は午後9時の最終バスで帰るよう場内放送で促されながらも、9時30分にはアクアポリスと海浜公園から花火が打ち上げられ、「蛍の光」が会場に流れるなか閉幕となった。
セレモニーは『ウルトラマン』の名脚本家が演出
なお、開閉会式をはじめ海洋博のセレモニーで演出を担当したのは脚本家の金城哲夫である。円谷プロダクションで『ウルトラマン』シリーズの脚本・監修を手がけた金城は、1969年に故郷の沖縄に戻り、沖縄芝居の作者や監督を務めていた。地元では沖縄博に懐疑的な声も多かったが、金城は、遠来の観客にこれをきっかけに沖縄文化の素晴らしさを知ってもらえば意義があると、海洋博の仕事を引き受けたという。
