〈あらすじ〉

 アメリカのある田舎町。地元で長く愛されてきた野球場「ソルジャーズ・フィールド」が最後の一日を迎えようとしていた。新中学校建設のため、正式に解体が決まったのだ。そのニュースを告げるラジオが流れる中、誰よりも早くスタンバイしたのは常連観戦スコアラーのフラニー。やがて草野球チーム「アドラーズ・ペイント」の監督兼ピッチャーのエド(キース・ウィリアム・リチャーズ)をはじめ、対戦チーム「リバードッグス」の面々も続々と集まってくる。

 特別うまくもない、動きもキレてない、ただ野球を愛する中年男たちによる最後の試合が始まる。ビール片手にヤジを飛ばし雑談を交わしながら。だが、長引く試合に審判たちは帰ってしまうし、ボールは見えなくなるし……。はたして、この試合、どうなる?

〈見どころ〉

 今日が終われば二度とこのメンバーで野球をすることはない。球場に通う日課も終わる。その事実を認めたくない大人たちの切なくもユルい空気感が魅力。野球をこよなく愛するアメリカらしい作品。

片田舎の球場の最後の一日を描く“脱力系”ベースボール・ムービー

中年のおじさんたちが草野球をしているだけなのに、なぜか涙が溢れてくる……!? これが長編デビュー作ながら独特のユルい笑いと切なさで、昨年のカンヌ映画祭で話題を呼んだ、新鋭監督による野球映画。

© 2024 Eephus Film LLC. All Rights Reserved. 配給:トランスフォーマー
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆ゆるくて、山なりで、人を食っていて、意外に打たれ強い映画だ。定番の悪役を出さず、固定ショットを多用して、滅びていく「わしらの時間」を静かに炙り出す。「脱力と哀愁」に収まり切らない狷介な体質も、ときおり滲み出る。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆思い出にしがみつくような終わらない野球が淡々と続く。可笑しみと切なさが満ちるセンチメンタルに刺激はないが、あのスペースマンが現れ、そして消えるシーンは野球好きにはアツい。まるで消滅する球場の妖精さんのよう。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆おっさん集団が草野球にユルく興じているだけの映画だが、通り一遍な物語のシステムへの回収を拒む構造はなかなか尖っている。提示されるのはコミュニティの場が失われていく光景。その最期の時間を見つめた哀惜の詩だ。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆小さな野球場の終焉をデビュー作にしてここまで豊かに描けるとは! 1日のうちの朝昼夜それぞれの光の塩梅、人物の動き、小さなモチーフを丁寧に構図に収め心地良い。ノスタルジックに寄りかかるほど弱くもなくユーモアでみせる。

  • 今月のゲスト
    柳亭小痴楽(落語家)

    ★★★★★ゆるやかに流れていくストーリーでシュール。集中してかぶりつく訳でもなく、どことなく一日中いられた昔の映画館にいる自分を思い出した。オヤジたちのくだらない軽口の応酬が、まるで落語家の楽屋の様で落ち着く楽しさ!

    りゅうていこちらく/1988年、東京都生まれ。落語家。若手真打の一人としてメディアでも活躍中。NHKラジオ第1『小痴楽の楽屋ぞめき』(毎週日曜13:05〜)メインパーソナリティー。また著書に『令和の江戸っ子まくら集』などがある。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
原題の「Eephus(イーファス)」とは山なりの高い軌道を描く超スローボールのこと。その名手として知られる元メジャーリーガーのビル・“スペースマン”・リーがカメオ出演している。
© 2024 Eephus Film LLC. All Rights Reserved. 配給:トランスフォーマー
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『さよならはスローボールで』
監督・脚本・編集:カーソン・ランド
2024年/米・仏/原題:Eephus/98分
10月17日(金)~
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
https://transformer.co.jp/m/sayonaraslowball/