〈あらすじ〉
ロンドンで暮らす主婦のパンジー(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)は今日も機嫌が悪い。配管工の夫カートリー(デヴィッド・ウェバー)のことも、いい歳をして家にいるばかりで職に就かない息子のモーゼス(トゥウェイン・バレット)のことも、家具店の客もスーパーの店員も、動物も植物も、あらゆるすべてのことが気に入らない。口を開けば文句と悪口を並べ立てて相手を攻撃し、挙げ句“誰も私のことなんてわからない!”と当たり散らす。そんな彼女に、夫も息子もただ黙って耐えるだけの日々――。
一方、パンジーの妹シャンテル(ミシェル・オースティン)は明るく陽気な性格。美容師として働きながら、娘二人と笑いの絶えない家庭を築いている。そして迎えた母の日、シャンテルは亡くなった母親の墓参りにパンジーを誘う。
〈見どころ〉
パンジーのとどまることのない怒りっぷり、理不尽な態度、そして孤独の表現があまりにリアル。この演技でジャン=バプティストは数々の演技賞を獲得している。
夫も息子も世の中のすべてが嫌い! 孤独な女性の抱える思いとは――
『秘密と嘘』で1996年カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞、またアカデミー賞に7度のノミネートを果たしているイギリス映画界の巨匠マイク・リーの最新作。現代ロンドンを舞台に、いつも怒りの感情を抱えた母親を主人公に描いた珠玉のヒューマンドラマ。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆相変わらず、棘と技のある監督だ。不機嫌をまき散らす主人公の描写にときおり辟易させられるが、空間に対する嗅覚は衰えていないし、光景の急所を切り取る手腕は老巧と呼ぶほかない。好感は抱けずとも、やはり一目置く。
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斎藤綾子(作家)
★☆☆☆☆ストレスで怒鳴り散らすパンジーの姿を己とは無縁と笑わせたいのか。彼女の一家の日常に己を重ねて辛さを味わえと言うのか。周囲を蹴散らす怒りの原因が悲しい記憶だけとは思えず。自覚のない密やかな孤独を見たかった。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆“怒り”という感情が自他にもたらす破壊力――その一点をこれほど集中して見つめた映画は稀だろう。メンタルヘルスと社会の相関を踏まえ、人間心理の奥底にまで視点を深く降ろしていく家族劇。マイク・リー監督の真骨頂だ。
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洞口依子(女優)
★★★★☆傑出した人物描写は、主演女優を中心にアンバランスなモビールをたのしげに眺めているよう。終いには、心の健康、愛についての理解を温かいブランケットと紅茶とビスケットを持って誰かと共有したくなった。
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今月のゲスト
柳亭小痴楽(落語家)★★★☆☆
陰気でさみしいパンジーの家庭。不安や恐れから出る方々への怒り、小言の当たり散らしが観ていて少し切ない。それを支える皆の気持ちを読み取るのは難しいが、その淡々とした雰囲気からなぜか小津映画の家族を思い出した。
りゅうていこちらく/1988年、東京都生まれ。落語家。若手真打の一人としてメディアでも活躍中。NHKラジオ第1『小痴楽の楽屋ぞめき』(毎週日曜13:05〜)メインパーソナリティー。また著書に『令和の江戸っ子まくら集』などがある。
- 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
- おすすめできます♪★★★★☆
- 見て損はない。★★★☆☆
- 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
- うーん……。★☆☆☆☆
© Untitled 23 / Channel Four Television Corporation / Mediapro Cine S.L.U. 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
INFORMATIONアイコン
『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』
監督・脚本:マイク・リー
2024年/イギリス/原題:Hard Truths/97分
10月24日(金)〜
新宿シネマカリテほか全国順次公開
https://hahanohi-film.com/




