ステージ4のがんを宣告されていた
――そうしたら当たってしまった、と。
将棋マダム 時期的に少し前後しますが、じつは私はステージ4の癌の宣告を受けて手術をしたんですよ。幸いなことに手術は成功しましたが、抗がん剤を6カ月やったせいで、そのときは頭もハゲちゃってました。
だから見届け人の応募をするときに「私は癌で、生きる希望は藤井聡太先生だけです」みたいなアピールを書いたわけですよ。そうしたら、ある日の夕方、日本将棋連盟から電話が掛かってきて「断ってもいいんですけど、どうされます?」と(笑)。
――あんまりゴリ押しな感じじゃないんですね。
将棋マダム 金額が金額ですからね。連盟の方に「いつまでに決済すればいいですか?」と尋ねたら、対局は8月9日だったのに、「8月の月末までに払ってくれればいいですよ」とか「分割でもいいですよ」みたいな返事だったんです。
100万円はクルーズ旅行の資金があったんですけど、残りの150万円は旦那に相談して、旦那から借りました。それで100万円と150万円で2回に分けて決済したんです。
まあ、人の移動が制限されていた時期でしたし、対局が愛知県の名古屋市だったので、近隣の応募者を探していたみたいですね。
「アイドル扱いするのは違うかなって」
――一般的に「精神的に弱っているときは『推し』にハマりやすい」と言われます。将棋マダムさんにとっては闘病のときがそれに該当するのでしょうか?
将棋マダム そういうのは、多少はあるかもしれません。それに、四段に上がるまでは、周囲から「あいつだけは昇段させたくない」みたいな扱いを受けてて、孤軍奮闘されていたじゃないですか。それは可哀そうだな、と思って見ていました。
ただ、私はあんまり人には執着しないんです。才能を愛してる人間なんですよ。今では藤井先生だけではなく、ほかの棋士の方も応援しています。
だから、藤井先生のことをアイドルみたいに崇めてる人が若いファンには割といるんですけど、それはちょっと感覚的にわからないですね。アイドル扱いするのは違うな、って。

