「女性社長さんにも観に来てほしい」

――2025年11月28日、草月ホールで「30周年記念公演」を開催されるそうですね。

鈴木 私たちの第1回公演が草月ホールだったので、どうしても同じ場所でやりたかった。あれだけお世話になったのに袂を分かってしまった女性社長さんにもこの公演のことを知ってもらい、観て頂けたら嬉しいんですが……。

30周年記念公演「T-W-O」

「86B210」の芯は変わらず、生きる喜びを実感すること。今回の公演はそうして30年間蓄積してきた自分たちの物語でもあるんです。パリで出会った映像作家のギョームさんは、私と桂子のことを『悪童日記』(アゴタ・クリストフ)の双子によく似ていると言いました。あるいは、『鉄コン筋クリート』(松本大洋)のクロとシロのようだとも。

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 私たちはフェティッシュ・イベントにも出演しますし、ダンスのエリートコースを歩んできたわけではないから、あちこちぶつかりながら、自分の道を探しているように見えたのかもしれません。冷たい、突き放されたような世界で、2人ガシッとくっついて、世界に吞み込まれないように自分たちのやり方で生き抜いていく――それを表現したのが今回の舞台の演目「T-W-O」です。

▼86B210 30周年記念公演

https://www.86b210.com/two

 

[86B210プロフィール] 

 鈴木富美恵と井口桂子による国内外で活動を続ける前衛舞踊デュオ。劇場・ギャラリー・クラブ・ストリートなど多様な空間を舞台に、感覚的かつ詩的な作品を発表し続けている。在仏日本大使館広報文化センターの「’97 Paris-Tokyo Festivel」を皮切りにヨーロッパ(フランス、イギリス、ドイツ、チェコ)での活動を始める。2006~2008年渡仏。2007年にはダンス雑誌『DANSER』(仏)と『ballet tanz』(独)で「Best Stage 34」のトップに選出。ティム・バートン来日時のパフォーマンスや、写真家 Michael Kenna のモデルとしても注目を集め、国際的なダンスフェスティバルやアートトリエンナーレにも数多く参加。東京・四谷の「Art Space呼応」でヨガやコンテンポラリーダンスを指導(Art Space 呼応 co-oh, tokyo, Yotsuya アート | Art Space呼応co-oh | 日本)。井口は合気道弐段。荒谷流武道奥伝。

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