「18歳になったら結婚しよう!」と真剣な目で…

 2022年に放送された『妻、小学生になる。』(TBS系)では、最愛の妻・貴恵(石田ゆり子)を亡くし、生きる気力を失った新島圭介を好演した堤。当初は見るからにしょぼくれていたが、貴恵の魂を持つ小学生の万理華(毎田暖乃)が現れたことで生きる喜びを得るとともに、顔にも生気が戻ってくるのが印象的だった。

 圭介は万理華にあろうことか、「18歳になったら結婚しよう!」とプロポーズする。傍から見るとヤバイ人だが、不思議と気持ち悪くならないのは堤の演技に嘘がないからだろう。本気で目の前の小学生を妻だと思い込み、大真面目に愛を伝えているのが分かる。その大真面目さが、ふふっと笑える可笑しみを作り出していた。

 また貴恵の台詞にもある通り、圭介は一見パッとしないおじさんなのだが、不思議と母性本能をくすぐる魅力があり、見れば見るほど愛らしく感じるのだ。

ADVERTISEMENT

朝ドラ『ばけばけ』公式Instagramより

“傳さまロス”から抜け出せない視聴者が続出

『ばけばけ』の傳もまたタイプは違えど、お茶目で可愛らしいところがある。第7回(10月7日放送回)では、傳が見合い相手が決まらず落ち込むトキを気遣い、「わしとランデブーをしないか?」と誘った。

 2人はトキが好きな怪談の舞台となった寺院へ。トキが怖がって傳にしがみつくシーンは、まるで歳の差カップルのよう。視聴者からは「私も堤真一とランデブーしたい!!!!」「堤真一とランデブー、何を差し置いても行くよ(笑)」「おトキちゃん代わって」「こんな素敵なおじ様羨ましい」という声が上がっていた。

 だが実のところ、傳はトキの生物学上の父。トキは生まれた直後、子供に恵まれなかった松野家に養子に出されたのだ。

朝ドラ『ばけばけ』公式Instagramより

 ゆえにトキのことをずっと気にかけ、お見合いの手配までした傳。第3週では、景気悪化で機織り工場の経営が傾く中、心労がたたって倒れてしまう。

 印象的だったのは、生粋のお嬢様ゆえに家事ができない妻・タエ(北川景子)に代わって看病を買って出たトキが傳におかゆを食べさせるシーンだ。年頃の娘にあーんされる恥ずかしさと嬉しさで、照れて下を向く傳が、かわいいやら切ないやらで胸がキュンとした。

 その後、一時は回復するも、再び体調が急変して帰らぬ人となる。死の直前、トキが気づいていたと知り、傳は「お前は、わしとおタエの子ではない」と言い聞かせた。いつか親子として振る舞いたいと願いながらも、トキが今まで通り松野家で暮らしていけるようにあえて強く否定した傳の深い愛情と覚悟。その姿はまさに武士であり、堤にしか出せない気迫に満ちていた。これはしばらく“傳さまロス”、“堤真一ロス”から抜け出せそうもない。

次のページ 写真ページはこちら