自分の子どもを殺されたメスが“謎の行動”に…
――オスはどんなタイプがモテるんですか?
森 気配りができるゴリラですかね。喧嘩があれば仲裁に入るし、子どもの面倒もしっかり見る。ただ、オスはメスに比べてとても大変だと思います。
メスは子どもが1歳半を過ぎると別のところへ行って好きなものを食べたり、気の合うメスとグルーミングし合ったりして過ごします。その間はオスがずっと子守りをするんです。しかも、メスが移籍したあとも、残された子どもの世話をします。
――メスは子どもを連れて行かないんですか。
森 メスが移籍するときに子どもを連れて行くと、新しいオスに子どもが殺されてしまう、いわゆる「子殺し」が起きてしまうんです。一緒にいる子どもが自分の子どもでないとわかると、オスは殺してしまうんですね。
あと、インタラクションといって、群れと群れが出会った時、気に入ったメスがいると、オスがそのメスのところに行って子どもを殺すこともあるんです。そうすると不思議なことに、メスは自分の子どもを殺したオスの元に移籍するんですよ。
――ショッキングですね。なぜ我が子を殺したオスについていくのでしょうか?
森 一説には、元のオスが子どもを守らなかったことを理由に、新しいオスの元に移ると言われています。元夫に対して三行半というのでしょうか。メスは強いオスを好むんですね。次に生まれる子を守ってくれるオスの元へ行くと言われています。「子殺し」の理由は色々言われていて、たくさん論文が出ています。
ゴリラの世界にもいじめがある
――そうなんですね。ほかに、ゴリラのハーレムで印象的だったことはありますか?
森 別のハーレムに移籍した途端に、イジメられたメスがいたんです。「ムガンガ」という、私とも仲良くしていたメスゴリラなんですけど。
あるときハーレムのメスゴリラたちが、腐った木に取り付いて食べていたんです。ムガンガが最後のほうにやってきて、自分も一緒に食べようとした。すると、みんなが「ギャー!!」と怒って、髪の毛を引っ張ったりして、ムガンガが食べるのを阻止したんですよ。
その後、私は見ていないんですが、ムガンガがリンチにあったそうです。ムガンガの足の裏に噛みつかれた跡が残っているのを見て、その激しさがよくわかりました。オスが急いで止めに入ったそうですが、既に噛まれたあとだったようです。
ムガンガがいた群れにはメスが5頭いたんですけど、この一件以来、ムガンガは群れのオスに近づけなくなりました。少しでも近づこうとすると、他のメスが「アッアッアッ!」と声を発して威嚇するんです。



