東アフリカ・ルワンダを拠点に、野生のゴリラを撮影してきた写真家の森啓子さん。撮影のために1年の半分以上を現地で過ごし、撮影歴は13年以上に及ぶといいます。
しばしば映画では凶暴なイメージが描かれがちなゴリラ。森さんがカメラを通して目撃した“意外な素顔”とは——。(全3回の2回目/続きを読む)
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お互いの鼻がくっつく寸前まで近づいて…
――オスのゴリラは体重が200キロを超えることもあるとか。森さんは至近距離まで接近したことはありますか。
森啓子さん(以下、森) ゴリラと顔を突き合わせるような場面はありました。距離はほんの5cmほどで、お互いの鼻がくっつく寸前です。
これは「覗き込み」といって、ゴリラなりに親しみを示したり、遊びに誘ったりするサインだとされています。
ゴリラは目と目でコミュニケーションできる動物です。ある日、ザックの中のものを探していると「私も見たい」と思ったのか、いつの間にかそばにきてじっと私の目を見つめてきました。私が「そんなに近くに来ないで」と体を背けると、回り込んでまた目を合わせに来て。
――意外と愛らしい生き物ですね。森さんから見て、ゴリラはどんな性格の生き物ですか?
森 基本的にゴリラは穏やかで優しく、繊細な平和主義者だと思います。「人づけ」されたゴリラなら、至近距離で目と目のコミュニケーションが取れるんです。一方、「人づけ」されていないゴリラは人間を怖がり、猛スピードで逃げていきます。
近づきすぎると襲われたり噛まれたりする危険がある。過去には、映画の撮影でカメラマンが近づきすぎて、太腿の肉を素手で抉り取られたという話も聞きました。その時の相手の状況やストレスを見誤ると危険なんです。
「ゴリラに吹っ飛ばされたことはありますよ」
――「人づけ」されたゴリラでも、体格は大きいですよね。怖さを感じることはないのですか?
森 私はあまり恐怖心はないですけど、なかには研究者やトラッカー(ゴリラの居場所や健康状態を365日チェックする人)でも怖がる人がいますね。以前、とても怖がりのトラッカーと一緒にいたときは、ゴリラが突然私たちの前に現れたので、トラッカーが慌てて私の後ろに隠れてしまったんです。「普通、逆じゃない?」って思ったんですけど(笑)。


