20歳まで障害者手帳をもらえることを知らずにいた
――苦しい幼少期をお過ごしになったんですね。義眼についてはユーザーになる以前からご存知だったんですか?
Rib 私は、生活できる程度の視力はあるんですが、もう片方の目も視力があまり良くないんです。それで「障害者手帳をもらう要件に当てはまっているよ」と眼科医の先生が教えてくれたのが、ちょうど20歳のときでした。
それまでは「片目失明だから、あなたは障害者手帳は取れないよ」と、まわりの大人が言っていたので、そうなんだと思い込んでいたんです。でも取得要件に当てはまっていると知って、20歳のときに障害者手帳を取得しました。
――そうすると20歳くらいから、アーティストの道に進まれたのでしょうか。
Rib まだです。19歳20歳あたりで義眼の勉強は始めていたんですけど、その一方で「堅実に生きよう」と思っていたので「大企業の総合職に就職して、安定した人生を送るぞ」と考えていました。
「手がかからない障がい者」として企業に求められて
――20歳の時は学生だったのでしょうか。
Rib そうです。エンジニア系というか、工学系の学生。安定して食べていけるようにと考えて、プログラミングを学んだりしていました。
それで大学を卒業し、就職しようという段階で障害者手帳を取得したので「障がい者を求めていて、かつ健常の方と区別なく働ける就職先」を探したんです。就活してわかったのが、企業に都合の良い障がい者が求められているということでした。
私の場合、片目が見えなくて、もう片方の目も視力が良くないから障害者手帳がもらえる。でも白杖も介助も必要がないし、特別な設備もいらない。当時は、私自身というより、そういった面で求められているなと感じていて。
就活していたのが2017年だったのですが、ちょうど2018年4月から障がい者の法定雇用率が少し上がるタイミングだったんです。それで障がい者を求めている企業が多かったんですね。
――障がい者枠の雇用だと、お給料がやや低めになるんでしょうか?
Rib 私は給料に差がない就職先を探しました。企業としても、総合職として働けるくらい能力があって、かつ手がかからない障がい者を求めていたんです。ところが、私がそれに迎合し過ぎてしまったようで「私、全然手がかからないです、大丈夫です」みたいな雰囲気になってしまった。
「大きい会社に入れたんだから頑張らなくちゃ」という上向きの気持ちで働いていたんですが、とはいえ、片目でパソコン作業をするので正直きつい。本来、一定の時間ごとに休憩が必要なんですけど「いや、頑張れます」みたいなことを言ってしまって……いよいよキツくなってきたな、と休憩を取るようにしたら「あなた、ちょっと休憩に行きすぎじゃない?」みたいなことを言われてしまった。
さらに、ノートパソコンみたいな小さな画面で作業するのはつらいので「大きめのモニターが必要なんです」とお伝えしたら、年功序列で「あのベテランの◯◯さんがモニターなんて使っていないんだから、あなたにあげられるわけないじゃない!」と言われてしまって。「あれ、私、障がい者雇用で入ったはずなんだけどな」と。

