日本の企業全体でみると、円安の方がメリットは大きい

 一方、日本は自動車、電気機器など輸出産業が数多くある。これらの会社は逆にアメリカで1ドルで売れば、これまで100円だったのが200円になり、何もしないのに売上が2倍になる。

 こうした輸出産業は下請けなども含めて大規模なものが多い。最近は海外に工場を作っているため、以前ほど円安で会社の業績が急増するということは減ってきたけれど、それでも日本の企業全体でみると、円安の方がメリットは大きい。

 なぜなら、電力、食品といった輸入産業は、値上げすれば会社へのダメージが減るし、会社全体をチェックして、無駄なコストを減らす良いチャンスになるからだ。輸出産業はもちろん儲かる。企業が儲かると社員の給料は上がる。

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 ただ、円安になって物価が上昇してから、実際に給料が上がるまでは時間差があるのが欠点。さらに、会社員は良いが、年金暮らしの高齢者など無職の人は給料なんてないから、恩恵を受けられない。

しかし度が過ぎると…

 アベノミクス以降、円安が進んで株価が上昇傾向にある背景にはこうした理由がある。よく、最近の株価がバブルとか、日銀が買い支えているからという人もいるけど、一番大きな理由は企業が儲けているからだ。

 1989年、平成バブルのピークの際、東証一部(現在のプライム市場)の企業は1株あたり58.8円儲けた。それが2024年8月には169.3円にもなっている。すなわち会社の利益に裏付けられた株高であり、円安傾向が続けば好調さが維持できるだろう。

 もっとも、物事には何事にも程度というものがある。

 日本の国力が弱体化してハイパーインフレとなり、1ドル500円になるなんて専門家っぽい人が唱えたりするけれど、急にそうなったら大変だ。物価の急上昇に賃上げが追いつかなければ、みんな買い物をやめてしまいモノが売れなくなる。そうなったら企業はどんどん潰れて、経済はますます悪化して、大打撃を受ける。