「ラーメン1杯1000円は高い」——そんな“1000円の壁”問題が話題になる一方で、海外では日本のラーメンが熱い注目を集めている。醤油や塩、煮干しなど多彩な味がある中で、世界で最も評価を集めているのは豚骨ラーメンだ。
では、なぜ豚骨だけが先んじて世界的評価を得られたのか。ラーメンライター・井手隊長さんの著書『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(早川書房)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)
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「世界最高のスープ」として評価されている豚骨ラーメン
日本のラーメンが「1000円の壁」に直面している中、世界でのラーメンの評価はうなぎ上りだ。多種多様のラーメンが全国に広がり、そのバリエーションの広さがラーメンの魅力の一つだが、その中でも世界で評価の高いラーメンはやはり「豚骨ラーメン」だ。「テイストアトラス(TasteAtlas)」が2023年に発表した「世界で最高のスープ100」では日本の豚骨ラーメンが第1位に選ばれ、「世界最高のスープ」として評価されている。日本のラーメンが海外に広がっていく中で、豚骨ラーメンの存在は大変大きい。
豚骨ラーメンを海外に広げた大きな功労者は「博多一風堂」だろう。豚骨特有の臭みを抑えながらも濃厚で旨味の強いスープと、自家製麺を特徴とする博多豚骨ラーメンを提供しているチェーン店だ。木製の看板と手染めののれん、木調の内装や店内にBGMとして流れるジャズなど、女性にも入りやすい雰囲気の店づくりにも定評があり、日本においての博多豚骨ラーメン人気を押し上げた先駆者としての功績も大きい。
二枚看板のメニューは「白丸元味」「赤丸新味」。女性客も多いが、男性が行っても物足りなさはなく、替え玉や卓上アイテム、充実したサイドメニューなども楽しい。
2008年にアメリカ・ニューヨークに海外1号店を出店してから、これまでにシンガポール、中国、イギリスなど15カ国に進出し、現在は296店(2025年3月現在)を展開している。
「一風堂」は1985年に福岡市中央区で河原成美氏が創業した。1994年には新横浜ラーメン博物館のオープンと同時に関東第1号店をオープン。その後、河原氏がテレビ東京「TVチャンピオン」におけるラーメン職人の腕を競う企画で3連覇を成し遂げ、全国に名を轟かせた。

