ラーメン1杯1000円は高いと感じてしまう「1000円の壁」問題。だが、募集しても従業員が集まらない、原材料や水道光熱費の高騰、外国人観光客に向けた価格設定などの理由で、その壁が崩れようとしている。
一方で、コロナ禍以降に急拡大したのが“冷凍ラーメン”市場だ。なかには1食1400円を超える価格設定にもかかわらずヒットし、リピーターを次々と生んでいる商品もある。
なぜ高価格の冷凍ラーメンが支持されるのか。ラーメンライター・井手隊長さんの著書『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(早川書房)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む/記事中「西川さん」とは冷凍食品専門家の西川剛史さんのこと)
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400円の市販品でもハイクオリティ
私が「お水がいらないラーメン」シリーズで初めて食べたのが「お水がいらない 横浜家系ラーメン」だ。カップ麺売り場でもお弁当売り場でもない、冷凍食品の売り場に売っている家系ラーメン。それだけで衝撃だった。
その名の通り、お湯も使わずに家系ラーメンが完成してしまうという画期的な商品だ。パッケージを開けると、スープの上に麺、その上に具がのって冷凍されている。これを鍋に入れて火をかけるだけ。8分ほど待つと家系ラーメンの完成だ。これは凄い。
濃厚な豚骨醤油スープに鶏油をきかせてあり、中太麺もモチモチとしていて美味しい。ニンニクやショウガ、お酢を入れて味変も楽しめるので試してみてほしい。非常に家系ラーメンのツボを押さえた商品でその味に驚いた。
この商品と出会って以降、私は冷凍ラーメンに注目し続けている。スープのクオリティはもちろん、特に冷凍することで麺と具材のクオリティがしっかり保たれているのが驚きで、いつの間にかチルドがベストであるという呪縛からは解き放たれていた。
西川さんによると、市販の冷凍ラーメンは現在大まかに4タイプがある。「一体型」「具付き麺+濃縮スープ」「トレー入り」「生麺、具材、スープ、すべてバラバラ」の4つである。以前より少し価格が上がってきていて、200~300円台で十分美味しい冷凍ラーメンは食べられる。少し高価格帯のもので300円から400円。現在は400円が市販品の価格の限界値であるようだ。
「コストを安くするためには、大量生産するだけでなく、“生産性”が非常に大事です。ベルトコンベアなどを使って機械で連続的に作れることが重要になってきます。
新商品はだいたい価格の壁にあたることが多いものの、ラーメンは珍しくここを超えた商品になります。冷凍ショーケースのスペースが限られている中、基本的には安くて売れているものしか置きたくないというのがお店の心理です。そこをラーメンが打ち崩してくれました。ラーメンは高価格帯商品の救世主と言えると思います」(西川さん)

