「一風堂」がここまで成長できたワケ

 ブランドに加えて「一風堂」がここまで成長できたのは、そのメニューが「博多豚骨ラーメン」だったからだ。博多豚骨ラーメンは麺が極細のため、茹で時間が他のラーメンに比べて圧倒的に短く、ラーメンの中で唯一スピード勝負ができる。

 たとえば濃厚つけ麺に使われる極太麺は10分以上茹でることもあるが、博多豚骨ラーメンなら、「かため」「ふつう」「やわらかめ」などお客の要望へ柔軟に対応しても平均1分もかからない。これだけ茹で時間が短いと回転がよく、客数も多く取れるので、出店の可能性がいろいろ広げられる。

 さらに、豚骨スープは海外を攻めるうえでの武器になっている。海外はダシ文化がないことが多く、醤油や塩などの特に清湯系のあっさりラーメンはなかなか旨味が伝わりづらいが、豚骨の旨味成分は海外のお客にもわかりやすい。また、煮干しや乾物などは日本ならではの文化で、海外では素材そのものが手に入りづらいという理由もある。そのため、日本で煮干しラーメンを提供しているお店でも、海外では豚骨ラーメンを提供しているというパターンも多い。どちらにしても「一風堂」が他店に先駆けて海外に進出し、その土壌を作ったからという理由が大きい。美味しいラーメンといえば「一風堂」の豚骨ラーメンという土台ができた中で、展開しやすい豚骨ラーメンが世界中に広がっていった。

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「一風堂」の店主・河原成美氏 ©︎文藝春秋

 2014年にはパリの街をラーメン一色に染めるイベント「パリ・ラーメンウィーク『Zuzutto』」が開催され、「一風堂」の店主・河原氏が総合プロデューサーを務めた。河原氏はパリのミシュラン一つ星レストランのオーナーシェフであるドミニク・ブシェ氏にラーメン作りを指導し、話題となった。豚骨ラーメンが世界に一流の料理と認められた瞬間である。

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