“ヤラセ”のようなえこひいきも……
秋元は、AKB48をはじめとするグループのプロデューサーや作詞家として、アイドル界を牽引する存在である。現在に至る秋元とアイドルの関わりは、ここから本格的に始まったといえる。
とはいえ、「ザ・スカウト アイドルを探せ!」はお笑いコンビのとんねるずが司会だったこともあり、真剣なものというよりは多分にバラエティ番組の一企画の色合いが強く、エンターテインメント寄りだった。
オーディション審査は月曜から金曜まであり、金曜の最後にその週の合格者が決まる。ところが、とんねるずが気に入った受験者の場合は、渡辺満里奈のように月曜の時点で勝手に「合格」と決めつけ、あからさまにひいきすることさえあった。オーディションからのエンタメ的な逸脱であり、いわばオーディションのカジュアル化である。
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時代はバブルへ向かうタイミングで、社会全体が時ならぬ好景気に浮かれ気分だった。経済的に相当の余裕ができた人々は、ファッションや海外旅行などの遊びに惜しげもなくお金を使うようになる。そんな遊びの1つにアイドルの応援もあった。
特に10代を中心にした若者世代にとって、それまでにない大人数のグループで自分の好みの存在を見つけやすい構成になっていたおニャン子クラブは、応援する楽しさを倍加させてくれるような存在だった。とんねるずの一見常識破りのえこひいきも、そのあたりのファン心理を敏感に感じ取ったものだっただろう。
画期的だった「卒業/加入」システム
そのことにも関連して重要なのは、大人数のグループという枠組みを維持するために常にメンバーが補充されていく仕組みがここで市民権を得たことである。おニャン子クラブはメンバーの誰かが抜けたら解散、ではなかった。
あるメンバーが卒業したらオーディションを経て別のメンバーが加入してくる仕組みであった。しかも定員が決まっているわけではなく、そのあたりは状況に応じて柔軟に対応された。こうして生まれた「卒業/加入」の仕組みは、同じく秋元康が総合プロデューサーとして関わる現在のAKB48グループや坂道シリーズにも受け継がれている。そしてそれを支えるのが、変わらずオーディションであるのはいうまでもない。
とはいえ、オーディションによる「卒業/加入」の仕組みは、秋元康プロデュースによるグループの専売特許ではない。先ほどふれたモーニング娘。でも同じである。
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