風呂に入れない代わりに、看護師が……

 その後、担当医から痒みを抑える薬を処方してもらい、真面目に毎日塗り続けましたが、退院後も痒みは引かず、その時もらった薬は切れてしまいました。そして、痒みとの戦いは長期化へ向かいました。

 掻いても掻いても痒いままでしたが、足裏にできた小さな水膨れを、ピンセットで摘まんで潰して、透明な液体と血を垂れ流すと少しだけ痒みが治まりました。それに何より気持ちよかったです。なので、できた水膨れをピンセットで潰したり、ハサミで切ったり、カッターで刺したりと、色々な方法で気持ちよくなりました。

 水膨れができては潰してできては潰してを繰り返しながら、たまには薬を塗って完治を夢見ていました。ですが、市販の薬をいくら塗っても完治はせず、その兆候もなく、困り果てました。痒みの苦痛と、潰す快感を行ったり来たりして、痒みとの戦いは、2年以上に及びました。

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 そこで、約9か月前、より貧しくなる覚悟を決め、なけなしのお金で、皮膚科に通い抗真菌薬ゼフナートを処方してもらい、半年前にようやく完治させることができたのです。

 なのに、たった6日間お風呂に入らなかっただけで、その苦労が再発です。恐ろしいことです。風呂に入れなくとも、毎日看護師さんが体全体、つま先もお尻も拭いてくれてはいました。それなのに、退院する頃には、足の裏に痒みが訪れたのです。ここからまた長い戦いです。余計にお金もかかります。

画像はイメージ ©maruco/イメージマート

 看護師さんに体を拭いてもらうことも、慣れないものでした。他人に隈なく体を拭いてもらうことは、幼児期以来で不思議な感覚でしたし、言われるがまま、されるがまま、腕を上げたり、足を上げたり、腰を浮かしたり、ベッドの上で、オムツ姿で、一方的に拭かれていて、形容しにくい気持ち悪さでした。有難いことですが、不慣れな気持ち悪い感覚でした。

 足の痒みだけが問題というわけではなく、体臭も気になりましたし、あちこちの垢も気になりました。入院時にできないことは数多く、耳かきも、毛抜きも、爪切りも、散髪も何もできませんでした。なので、衛生面でのストレスも大変でした。

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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

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