南極や高地、離島といった「極地」を訪れるツアーが富裕層の間で人気を集めている。クマ問題を取材するライターの中野タツヤさんは「2022年、プライベートヘリでロシア極東地域の絶景や野生動物を見学するツアーに参加したカップルがツアー中に亡くなる事件が起きた。遺体はヒグマによって激しく食害されていた」という――。
お金持ちに人気のツアーで起きた悲劇
プライベートヘリに乗り、絶景や野生動物を見学する高額ツアーに参加したカップルが、ヒグマに食害された状態で発見される、というおぞましい事件をご存知だろうか。
2022年7月16日。ロシア極東地域のカムチャッカ半島において、モスクワ在住の富裕層カップルを乗せたロビンソン社製小型ヘリコプターが消息を絶った。ヘリコプターに乗っていたのは、ゾイヤ・カイゴロドワ(Zoya Kaigorodova)と、セルゲイ・コレスニャク(Sergey Kolesnyak)、およびパイロットのイゴール・マリノフスキー(Igor Malinovsky)の3人。
ゾイヤ・カイゴロドワはモスクワ在住の女性実業家で、正確な年齢は明らかになっていないが、事故当時は40代だったとされる。モスクワ工科大学で情報システムについて学んだのち、大統領直属の国民経済行政アカデミーでコーポレートガバナンスを学び、主にIT企業でキャリアを築いていた。
特にEコマースの分野においてはトップマネージャーとして知られ、個人でも衛生用品ブランドを立ち上げるなど、広く実業家として活躍していた。資産規模は明らかにされていないが、現地の報道では非常に裕福な人物だったとされる。
被害者は、富裕層カップルと有名アスリート
セルゲイ・コレスニャクはゾイヤ・カイゴロドワの男性パートナーで、自身もスウェーデンに本社を置く通信業者Tele2(テレツー)の幹部として、やはりロシアのIT業界で高収入を得る人物だったと見られる。
ゾイヤ・カイゴロドワとセルゲイ・コレスニャクは、誰もがうらやむ成功者カップルとして、モスクワのIT業界ではかなり有名だった模様だ。日本で言えばさしずめ港区のタワマンに住むパワーカップルといったところだろう。
