「たまたま嫁が倅と一緒に実家に帰っているので」

 普段は派遣社員として働く織姫さん(20代)がハロウィーンの渋谷を訪れるのは今年で3、4回目だという。

積極的な声かけをしなくても渋谷ハロウィーンを楽しむ織姫さん ©文藝春秋

「あんまり自分から話しかけたりはしないんですけど、話しかけてもらったら一緒に写真を撮ったりして。やっぱり楽しいから渋谷に来ちゃいますね。今日も神奈川からこのために来ました」

 続けて、夕方から街を訪れる気合いの入りようだった性別不詳の人物にも話を聞く。

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渋谷駅前に現れた「ファミチキ」 ©文藝春秋

「私は今年が初めての参加です。たまたま嫁が倅と一緒に実家に帰っているので、楽しみに来ようかと。倅は小学生なんですけど、この格好で渋谷に来ていることも知っています。

 迷惑行為をする人もいるので、渋谷のハロウィーンに文句を言いたい人がいるのもよくわかります。ただ、良識を守ってこの街をよくしようと考えている自分としては、『ハッピーハロウィーンにしたい』の一言ですね」

完璧なディテール ©文藝春秋

 そう語るゴリさん(40代)の衣装は、ファミリーマートが販売したもの。2万円ほどで購入したのだとか。

 一方、何人ものコスプレイヤーから撮影を求められていた中国出身の学生、桐原拓斗さん(25)のコスチュームは、2~3カ月かけて自作したものだという。

武器は市販品を流用しているのだとか ©文藝春秋

「1年のうちにこういう服を着られる機会はとても少ないです。なので、今回は歴史のある渋谷のハロウィーンに参加することに決めました」

 コスプレの種類も違えば、コスプレ衣装との向き合い方、街を訪れる目的も違う。渋谷という街の多様性が表れているようだというと言い過ぎだろうか。

コスプレイヤー同士の交流も

 取材を行っていくなかで、例年に比べて目についたのは、あちらこちらでコスプレイヤー同士が交流している様子だ。

 写真を撮りあったり、お菓子を配ったり、笑顔で雑談を交わしたり……。あちらこちらで、ゆるやかなコミュニケーションがとられていた。

交番の隣で催された即席撮影会も特に注意を受けることはなかった ©文藝春秋

 滞留が発生している場では、警察や警備員からの注意が飛んでいたものの、例年に比べると、その頻度も少なく、来街者の減少はもちろんのこと、“迷惑”の基準を引き上げたのだろうかとすら想像してしまうほどだった。

 そんなコスプレイヤー同士の交流を羨ましそうに見やる若い男性2人組は、自分たちの服装が普段着なのが気がかりなのか、なかなかコミュニケーションの輪に入っていけてないよう。