子どもの貧困、児童虐待の実態
――仲田蛍シリーズでは、一貫してテーマに「子どもたちの貧困」「児童虐待」という社会問題を持ってきたのはなぜでしょうか?
天祢 もともとは「日本では子どもの貧困なんてたいしたことない」と思っていました。しかし、経済学の研究をしている知人から「よく調べた方がいい」と叱られて、自分なりに調べた結果、己の無知を思い知りました。それで書き上げたのが『希望が死んだ夜に』です。
刊行後、「こういう問題があることを知らなかった」という声を数多くいただきました。傍目にはわかりづらい状況ゆえに、理不尽な目に遭っている子どもがいる。そのことをもっと知ってほしいという思いから、仲田蛍が探偵役を務めるシリーズでは「子どもが巻き込まれる事件」を中心に据えることにしています。一方で、「不幸な子どもを商売に使っているのではないか」という後ろめたさというか、葛藤のようなものも絶えず抱いています。
――仲田蛍というキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか? 誰かモデルになったような人はいますか?
天祢 第1作『希望が死んだ夜に』の主人公は、ネガとのぞみという少女2人です。物語の構成上、彼女たちとは別に探偵役も必要なので、「事件を解決する装置」として生まれたのが仲田でした。子どもがかかわる事件なのでやわらかい雰囲気のキャラがいいだろうと思い、性別は女性に。さらに子どもに接する機会が多い生活安全課員がいいだろう、暗い世の中を照らしてほしいという願いを込めて名前は「蛍」にしよう……という風に徐々に設定を肉付けしていきました。
モデルはいます。最初の時点では、個人的に大好きなある女優さんがモデルでした。しかし書いているうちに小柄になったり、目許の雰囲気が変わってきたりして、いまはその女優さんのイメージからかけ離れています。
