傑作揃いの15周年の4作品
――『陽だまりに至る病』は、コロナ禍の渦中にあること自体がトリックというか、ミステリーの仕掛けになっているところが秀逸だと思いました。
天祢 ありがとうございます。コロナ禍の中、マスクをつけて東京・町田を歩き回って設定を固めた甲斐があります(笑)。あの時期の町田は人が少なくて、ちょっと不気味ですらありました。「こういう時代がずっと続くのかもしれない」と不安に思った覚えがあります。
――最後に、15周年の今年に刊行された『陽だまりに至る病』以外の3作品について、一言ずつ推しポイントを教えてください。
天祢 『彼女はひとり闇の中』…犯人が事件を起こした経緯と動機。
『その血は瞳に映らない』…SNSの闇に翻弄される人々。
『どうせ死ぬなら殺してみませんか』…手紙を介した、ちょっとずれてる2人の交換殺人。
――『彼女はひとり闇の中』と『その血は瞳に映らない』は主人公が同じシリーズ作ですね。前者では大学生だった千弦が、後者ではネットメディアの記者となっています。『彼女はひとり闇の中』では物語の合間に殺人者の独白が挿入されるサスペンス味あふれた傑作だと感じました。著者の手応えはいかがだったでしょうか?
天祢 千弦は『キョウカンカク』の探偵役・音宮美夜が「普通に大学生をしていたら」というコンセプトで生まれました。だから『彼女はひとり闇の中』ではやたら気が強くて危なっかしいのですが(笑)、『その血は瞳に映らない』では少し大人になっています。
『彼女はひとり闇の中』の犯人独白のシーンはそれなりに長さがあるのですが、2、3日で書き上げました。自分史上最速ペースです。自然と気持ちが昂ぶり、キーボードを打つ手が止まりませんでした。現時点の自分における最高傑作の場面だと思っています(担当さんからもほめてもらいました)。
『その血は瞳に映らない』に関しては、SNSについて書いたためかネット上で思いのほか好評をいただいています。書評も複数いただいており、なかなか高評価のようでありがたいです。そういう小説を書かせてくれた担当さんに感謝です。

