国際結婚した日本人女性が海外でDVの被害を受けている
また、海外に永住する日本人の中には国際結婚をしている女性が多いと考えられることはすでに述べたが、パートナーである外国人男性が伝統的なジェンダー規範を持っている場合、暴力の対象になりやすいという指摘もある。実際、非営利団体や在外公館によれば、国際結婚した日本人女性が海外でDVの被害を受けているケースは確実にある。
この問題はコロナ前から存在しており、国際離婚の原因の一つとされていた。コロナ禍の最中は、日本を含む多くの国々でDVが頻発し、国連のグテレス事務総長が警告を発したことは記憶に新しいが、筆者が住む豪州でもコロナ禍中にDV被害にあう日本人女性が増加し、在外公館から注意喚起や被害にあった場合の対処に関するメールが在留邦人宛に送付された。
日本に帰国したくても、子どもと一緒に帰国することは難しい
移住した後、帰国したくても帰国できない日本人も出てきている。DV被害者の女性たちはその一例だ。海外における日本人と外国人配偶者の離婚に関する詳細なデータは公表されていないが、バブル経済の崩壊後、海外における日本人女性の国際結婚が増加するに伴い、DVなどによる別居や離婚も増えたと推測する研究者もいる。しかし、DVが理由で日本に帰国したくても、子どもと一緒に帰国することは難しい場合が少なくない。ハーグ条約がその理由の一つだ。
1980年に採択されたハーグ条約は「一方の親の同意なく子どもを元の居住国から出国させること」や、「一方の親の同意を得て一時帰国後、約束の期限を過ぎても子どもを元の居住国に戻さないこと」をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして、「子どもを元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定めた条約」である。
元配偶者が同意しない場合は…
日本は2014年にこの条約を批准したのだが、仮にDVが理由で子どもと日本に帰国した場合でも、配偶者の同意がなければ「子の不法な連れ去り」とみなされる。離婚しても、子どもを連れて日本に帰国するには、元配偶者の同意が必須になった。
元配偶者から日本政府に申し立てが行われるケースもあり、2014年から2023年の間に外国から子どもを返還するよう申し立てがあった件数は203件に及ぶ。こうした状況があるため、仮に離婚後に子どもと一緒に住むことができても、元配偶者が子どもを日本に住まわせることに同意しない場合は、移住先の国に留まらなければならないのだ。
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