以来、仕事に対して「ノーはじゃんじゃん」言うようになった。童顔で幼く見えるルックスに反して、飛び出す言葉は鋭くて強いので、《よく言われます。アニマルとかモンスターとか(笑い)》と本人も認めるほどだった(『週刊朝日』2007年5月18日号)。

 前出の『大阪物語』で映画各賞の新人賞を総なめにして以来、声優を務めたスタジオジブリのアニメ映画『猫の恩返し』(森田宏幸監督、2002年)、妻夫木聡と共演した恋愛映画『ジョゼと虎と魚たち』(犬童一心監督、2003年)など多くの話題作に出演してきた。

映画『ジョゼと虎と魚たち』(2002年公開)

「早く年を取りたい」「年齢を重ねることが楽しみ」

 池脇はある時期から、演じることを「役を生きる」と表現している。たとえば、24歳で主演した映画『ストロベリーショートケイクス』(矢崎仁司監督、2006年)の公開時には、《今の私にとって、役を演じるとは生きることですね。役を生きるということが、池脇千鶴が生きることでもある。その関係性に幸せを感じます。確かにいろんな人の人生を生きるのはしんどいけれど、経験を積んで、早く年を取りたいんです(笑)》と語っていた(『キネマ旬報』2006年9月下旬号)。

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「早く年を取りたい」と述べた5年後、30歳になった直後には《年齢を重ねることが本当に楽しみ》と言うまでになり、その理由を《同じような役は一つとしてない、ということも分かってきましたし、『大阪物語』が十五歳の時だからこそ出来たお芝居だったように、今しか出来ない演技、これから出来るようになる演技があると感じているからなんです》と説明している(『週刊文春』2011年12月1日号)。

2003年4月、映画「ジョゼと虎と魚たち」の制作発表会見での池脇千鶴(左)と妻夫木聡 ©時事通信社

撮影が終了するまでは人と会わないように

 20代後半から30代にかけてのこの時期には、『丘を越えて』(高橋伴明監督、2008年)で二人の男性から求愛されるヒロインを、黒沢清監督のWOWOWのドラマ『贖罪』(2012年)第4話では初めて悪女役を演じるなど、役の幅も広がっていった。

 池脇はブログやSNSをやっていないこともあり、いまどきの芸能人には珍しくプライベートは謎に包まれている。いくつかの雑誌記事で語ったところでは、とりたてて趣味と言えるようなものはなく、楽しみといえばお酒を飲むことぐらい。ただ、晩酌をしていても仕事のことを考えることが多いらしい。31歳のときのインタビューでは、《トイレに行ってもお風呂に入っても、常に仕事のことを考えています。ズルい言い方ですけど、私のなかでは仕事が100%で、そのなかに恋愛や家族が入っている。仕事あっての私で、それがないと私じゃないんです》と言い切っている(『ゲーテ』2013年10月号)。

 撮影の準備段階から終了するまでのあいだは、人と会わないようにしている。それも、仕事に入ると役のことばかり考えてしまい、そんなときに人と会っても上の空になっていたりするので、相手に失礼だし、自分も楽しくないからだという(「GINZA」ウェブサイト2018年8月12日配信)。