19歳のチャールズ・スタークウェザーは恋人キャリルの家族を皆殺しにし、わずか8日間で合計10人を殺害した。死刑を逃れる可能性があったにもかかわらず、最後に犯した“人生最大の失敗”とは――。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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恋人の家族を皆殺し

 年が明けた1958年1月21日、チャールズは恋人キャリルの家を訪ねる。彼女の母親ベルダ・バートレット(同36歳)と再婚相手で継父のマリオン(同58歳)は、娘と街の不良との交際に当初から反対していた。

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 いくら、お嬢さんを愛していると言っても相手にされない。かくなるうえは殺すしかない──。この日、22口径のライフル銃を手に玄関口に現れたチャールズにベルダは驚愕した。が、マリオンさんと狩りに行こうと誘いに来たという彼の言葉に気を許し家の中に入れてしまう。そこにキャリルが学校から戻ってきた。

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 マリオンはチャールズの誘いを一蹴したばかりか、改めて娘にまとわりつかないよう警告。これに血が上ったチャールズはマリオンと口論となり、やがて揉み合いに発展。もはや制御がきかなくなりマリオンとベルダを射殺、さらに彼らの実子である2歳の幼女ベティ(キャリルの義妹)も撲殺してしまう。

 驚くべきは、その後、チャールズとキャリルが3人の遺体をニワトリ小屋と納屋に隠してから、1週間にわたって家に居続け、さらには玄関に「全員、インフルエンザにかかっています。立ち去るべし。ミス・バートレット」と記した紙を貼ったことだ。

 心配した隣人や親類が訪ねてきた際には、キャリルが玄関に顔を出し「誰も家には入れてはいけないとお医者さんに言われてるの」と追い返した。どうにも様子がおかしい。違和感を覚えたキャリルの祖母が1月28日に警察に通報。まもなく到着した捜査員が屋内に突入し3人の遺体を発見したが、そこにチャールズとキャリルの姿はない。悪運が強いのか、彼らは警察が来る直前に車で逃亡していた。