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酷暑の中、なぜ地球は20年後に「ミニ氷河期」に突入するのか

涼しい未来を見据えて猛暑を乗り切ろう

2018/08/05
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 連日のように猛暑が続いており、埼玉県熊谷市では我が国の観測史上最も高い気温となる41度1分を記録した。これは日本だけのことではなく、アメリカやアフリカでも最高気温50度以上を観測するなど、この夏は世界的に異常な暑さが続いている。しかし、実は、いまの地球は「温暖化」ではなく「ミニ氷河期」に向かっているという事実をご存知だろうか。遠い未来の話ではない。早ければ約20年後に、である。

 本稿では私の専門とする地球科学の観点から、なぜこのような事態が起きているのか、そして今後の予想を述べたい。

東京が「熱の島」になっている

 折しも8月5日から全国高校野球大会が始まるが、会場の甲子園は今年で100周年を迎える。そこで近年の盛夏が100年前より暑くなっているかどうか、またその原因を最先端の気象学に基づいて考えてみよう。

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 最初に首都圏3500万人を代表して、東京の最高気温と最低気温の記録を調べてみる。気象庁によれば東京では夏の最高気温は過去100年に1.5度上がり、最低気温は2.7度上がった。すなわち、最低気温の上昇の方が大きいため、朝も晩もより暑苦しく感じるようになってきたのだ。

 これについて地球科学的にはスケールの異なる二つの原因が特定されている。すなわち、「ヒートアイランド」と呼ばれる地域的な現象と「地球温暖化」という世界規模の現象である。

パソコンの普及も温暖化に影響

図1:ヒートアイランド現象を起こす原因。(出典=鎌田浩毅著『せまりくる「天災」とどう向きあうか』ミネルヴァ書房)

 ヒートアイランド現象とは、都市の中心地域の気温が郊外とくらべて高くなることである。英語を直訳すれば「熱の島」で、気温の分布を見ると都市の中心だけが島のように孤立して暑いことから命名された。夏の大都会が以前とくらべて熱がこもっているように感じられるのはこのためである。

 たとえば、東京で気温が30度を超える時間(日数ではなく時間)は、ここ20年で2倍ほどに増えている。また、都心部と郊外との日中の気温差が10度近くになることもしばしば観測されている。

 ヒートアイランド現象を引き起こす原因の第1は、建物や工場、自動車などから出る排熱である。経済活動にともなって、工場やオフィスからは大量の熱が排出される。エアコンやパソコンの普及によって、都市からの排熱は年々増加の一途をたどっている。

 そして第2は、熱吸収率の高いアスファルトやコンクリートで地面が覆われるようになったことだ。こうした人工物で地面が覆われると、日中、植物が葉の表面から蒸散することで熱を逃がす効果や、大きな樹木が日射を遮る効果がなくなってしまう。また、水を保持する土の地面が減ると、水の蒸発によって温度を下げる効果が減る。

 第3は、建物の密集化による風通しの悪さである。都市に高いビルが密集すると、地表近くを通る風が弱くなり、空気が入れ替わりにくくなる。特に高層建築物の谷間では、夜に熱が上空へ逃げにくくなっている(くわしくは拙著『せまりくる「天災」とどう向きあうか』ミネルヴァ書房を参照)。