そして本作、DLC(追加コンテンツ)がないと明言されている。この発表はゲーム好きには好意的に受け止められたようだが、長く遊ぶゲームとして考えると残念でもある。
『マリオカート8 デラックス』が6956万本も売れたうえ今でも販売ランキングに乗るのは、発売から数年経ってDLCでコースが追加されたのも重要な要素だろう。『あつまれ どうぶつの森』も『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』も、コンテンツの追加で息が長くなった。
ましてや現在、マルチプレイものにおいてアップデートでゲームに変化をつけるのは常道である。『マリオカート ワールド』もおそらく、DLCでかなり長い期間遊べるようにしてくるだろう。
DLCがないメリットは、ゲームクリエイター桜井氏が新たな作品に取りかかれるといった部分である。というよりむしろ、かつて『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』に長年縛られていたのが問題なのだろう。それはそれとして、DLCなしの判断が『カービィのエアライダー』の輝く時間を短くするのは確かなはずだ。
『カービィのエアライダー』の問題というよりも…
そして、ゲーム機を取り巻く環境も変化している。Nintendo SwitchおよびNintendo Switch 2はかなりの人気だが、日本でもPCゲームが徐々に浸透しているし、スマホを持っていない人のほうが少ない状況だ。ゲームキューブの時代とは大きく様変わりしており、属するコミュニティも多様化している。
つまり、『カービィのエアライダー』はゲームを遊ぶコミュニティがより限られていた時代であれば、さらに高く評価されていたのではないか、といえるのである。
そして、ほかのコミュニティに属する人が『カービィのエアライダー』を見ると、『マリオカート ワールド』との違いがあまり見えてこないのではないのだろうか。「マリオカート」ほど誰もが知る鉄板タイトルでもなく、「大乱闘スマッシュブラザーズ」のように作品の垣根を越えたとんでもないお祭りでもない。となると、ハードルのあるこのゲームの魅力に気づきづらいのではないか。
これは『カービィのエアライダー』の問題というよりも、Nintendo Switch 2を取り巻く制約でもある。Nintendo Switch 2はインターネット越しにコミュニケーションを取りやすくするシステムをつけたものの、やはりポリシーそのものが昔気質である。
もちろん、前述のようにNintendo Switch 2が売れて任天堂のコミュニティとでも呼ぶべきものがより育っていけば、『カービィのエアライダー』もより売れて評価が上がっていくだろう。
ただ、『カービィのエアライダー』はその魅力を内に秘めてしまったタイトルなのかもしれない。
