全世界での累計発行部数が1億冊を超える、アクション漫画の金字塔『北斗の拳』。2026年には、新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-(フィスト オブ ザ ノーススター)』の放映も決まっている。

 その原作者である武論尊さんは、中卒で自衛隊に入隊。数年を過ごしたのち、同期で先に離職して漫画家デビューしていた本宮ひろ志氏のプロダクションへ転がり込み麻雀漬けの毎日を送っていたが、週刊少年ジャンプの編集・西村繁男さんに頼まれて書いたストーリーがきっかけで、デビューすることに。武論尊さん本人に、デビュー当時の話を聞いた。(全5回の2回目/続きを読む)

武論尊さん自らに『北斗の拳』のルーツを語ってもらった(以下、写真撮影=川内イオ)

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 航空自衛隊の同期、本宮ひろ志氏のプロダクションに転がり込んだ武論尊さん。初めて書いた原作は、週刊少年ジャンプで本宮氏の担当編集者をしていた西村繁男さんから声をかけられて書いた。それが思いのほか出来が良く、西村さんの自宅で、漫画の原作として使う原稿用紙の書き方を教わりながら仕上げた。

 それを西村さんに預けたところ、デビューが決まる。1972年、週刊少年ジャンプ(1号)の読み切り作品として『五郎くん登場』(作画・ハセベ陽)が掲載された。素人が最初に書いた作品がいきなりデビュー作になるのは、異例のことだ。

「2年ぐらい本宮のところにいて、ジャンプを見てるでしょう。そうしたら、よく読まれるストーリーって、わかるよね。弱いやつが強いやつに勝つってこと。それで、いじめらっれ子の中学生が立ち上がるストーリーを書いたんだよ」

 武論尊さんは、この時の原稿料を今でも覚えている。31ページで、1万5000円。当時の本宮プロの月給が3万円という時代だった。

 このデビュー作から「武論尊」と名乗り始めた。由来は、俳優のチャールズ・ブロンソン。本宮プロで自ら「おれってチャールズ・ブロンソンに似てるよな?」と言ったのがきっかけでついたペンネームで、事務所内では「ブーちゃん」と呼ばれていた。