N-BOXの不安要素その1:「新型」なのに減少した販売台数

 ヒット車種が姿を消していく兆候のひとつに、「新型の販売台数が伸びない」というのがある。それまでは消費者のニーズを捉えていても、ちょっとした変化が心変わりを引き起こすのだ。

 ワゴンRも、2008年のモデルチェンジによって販売台数を落とし、そのモデルが切り替わる2012年に首位から転落している。コストをかけて改良したはずの新型がかえって売れなくなるのは、相当に危険な兆候といえる。

2008年に発表されたワゴンR 4代目。モデルチェンジによって販売台数を落とした 写真は公式ホームページより

 実は現行N-BOXも、先代から販売台数を落としている。現行モデルは2023年10月にフルモデルチェンジ(FMC)を果たしたが、2024年の販売台数は前年を約10%も下回り、2025年に入ってからもペースは上向いていない。

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2023年に発売された現行N-BOX

 一方で、N-BOXとほぼ同じ時期(2023年11月)にFMCをしたスズキ・スペーシアは、2024年に前年から約35%も台数を伸ばしている。

FMCで大きく売上台数を伸ばしたスズキ・スペーシア 写真は公式ホームページより

 これと比較すると、N-BOXの状況はやはり芳しいものではなさそうだ。

どうして新型なのに売れなくなった?

 N-BOXが先代よりも販売台数を落としているのは、ポジティブにいえば「先代が優秀すぎたから」なのかもしれない。裏を返せば、「先代のようなインパクトが現行モデルにはない」ということになる。

 2017年に登場した先代では、先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準搭載し、自社の普通車にも搭載されていない「後方誤発進抑制機能」を初導入するなど、まさに「軽の枠を超えた存在」としてのアピールに成功していた。

2017年に発表された先代N-BOX。先進の安全運転支援システムがアピールされた 写真は公式ホームページより

 一方で現行モデルでは、走りの質感や静粛性といった面で着実な進歩は見られるものの、先代のように「軽の常識を変える」ほどのわかりやすい進化は見られない。反対に、細かな収納スペースの数が先代から削減されたり、内装デザインがシンプルになり質感の向上が感じにくかったりと 、先代ユーザーにとって違和感につながる変更点もある。

 それでいて、車両価格は着実にアップしており、たとえばカスタムのターボグレードでは先代から10万円ほどの上昇が見られる。加えて、エントリーグレードを廃止したことにより、最低価格は約140万円から170万円台に跳ね上がった。

 原材料費の高騰や機能の向上を考えると致し方ないところではあるが、やはり先代を知る消費者からすると、どうしても「割高」に感じられてしまう。