不安要素その3:派生車種の伸び悩み
販売台数に陰りが見えたとき、状況を打破しうるのが「派生車種」の存在だ。たとえば普通車の市場であれば、SUVの流行にあわせた「カローラクロス」「ヤリスクロス」といった派生車種が、カローラおよびヤリスの販売台数を押し上げている。
かつてスーパーハイトワゴンの台頭により、ワゴンRとともに首位争いから脱落したムーヴも、2016年に派生車種の「ムーヴキャンバス」を発売している。翌年にかけて40%ほど販売台数を伸ばし、2017年のランキングでは2位に返り咲いた。
ただもちろん、派生車種を展開したからといって必ずしも状況が打開できるわけではない。ワゴンRは2021年に派生車種の「ワゴンRスマイル」をリリースするが、現状ムーヴキャンバスほどの効果は得られず、年間ランキング上でも大きな飛躍は見られていない。
N-BOXの場合はどうか。スペーシアやタントといった競合車種は、昨今のアウトドアブームに乗じ、「スペーシアギア」や「タントファンクロス」という派生グレードを展開している。ホンダもこれに対抗すべく「N-BOXジョイ」を投入しているものの、投入前後で販売台数にさしたる変化は見られず、「派生車種による新規層の開拓」という面で課題が残る。
直近では日産・ルークス、三菱・eKスペース、デリカミニの姉妹車種がフルモデルチェンジを迎え、スーパーハイトワゴン市場はますます混沌としていくだろう。長らく市場を牽引してきたN-BOXの王座は、周囲の進化と多様化によって絶対的なものではなくなりつつある。


