首位転落は一時的? しかし競争激化は必至
もちろん、こうした不安要素があるにもかかわらず、N-BOXがモデルチェンジ後も販売台数トップを堅持してきたことは事実だ。
そもそも今回の首位転落も、一時的なものに過ぎないという見方もある。新車の登録台数は、例年4月と10月に落ち込む傾向があるが、N-BOXは過去にも10月に激減するケースが見られた。
これは、3月と9月の決算期にあわせた販促活動や、ディーラーが大量の車を自社で登録する「自社登録」の反動が、翌月に出やすい構造に起因する。N-BOXは2021年の10月にも3位に転落したことがあり、今回の4位への降格が、必ずしも恒常的な販売力低下を意味するものではないと見ることもできる。
加えて、かつてワゴンRが「より革新的なジャンル」に立ち位置を奪われたのに対し、N-BOXなどスーパーハイトワゴンよりも世のニーズを捉えたジャンルはまだ見られない。BYDが「EVのスーパーハイトワゴン」で市場参入を目論むが、インフラ面や認知度、信用度の面を考えると、いきなりの「ゲームチェンジ」は考えにくい。
とはいえ一方で、スーパーハイトワゴンの市場がすでに飽和状態となり、価格面でも年々消費者の負担感が大きくなっているのも事実である。
とくに物価高騰が国民生活にのっぴきならない影響を与えるなかで、軽に200万円、さらには250万円と、どこまで消費者が受容しうるのかは不透明といえる。そのなかで、より割安な「トールワゴンのスライドドア」へと鞍替えが進んでいく可能性もあるだろう。
こうした経済性を重視した移行は、1990年代から2000年代の普通車市場でも起きている。カローラやサニー、マークIIやクラウンがランキング上で存在感を発揮していた時代から、フィットやヴィッツ、マーチやパッソといったコンパクトカーが上位を占める時代への転換である。
そう考えると、今は慣れきったN-BOXだらけの街並みも、少し名残惜しく感じられてしまう。「軽があれだけ豪華な時代があった」と懐かしむ未来は、おそらくそう明るいものではないだろうから。
