不安要素その2:「新たなジャンル」の存在

 かつてワゴンRが王座から転落したとき、それを追いやったのはN-BOXやタントなどの「新しいジャンル」の車だった。今回のケースでも、N-BOXの地位を脅かす「革新的な存在」がいるのだろうか?

 10月のランキングでトップに立ったのは、ダイハツ・ムーヴである。もともとワゴンRと同じ「トールワゴン」に属する車種だが、今回のフルモデルチェンジによって「スライドドア」を備え、販売台数を大きく伸ばしている。

2025年に発表された7代目ムーヴ。最大の売りは全グレードに搭載された後席スライドドア 写真は公式ホームページより

 ただ、トールワゴンという「かつての定番」にスライドドアがついたからといって、「革新的なジャンル」とまでは呼びがたい。実際のところ、車内の開放感や装備の豪華さ、シートアレンジの豊富さは、どうしてもN-BOXなどのスーパーハイトワゴンに軍配が上がる。

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 ムーヴの優位な点は経済性にあり、車両価格は135.9万円~と、他のスーパーハイトワゴンのベースグレードと比べて10万円~15万円ほど低い設定だ。加えて、スーパーハイトワゴンよりも一回り車体が低く軽量なムーヴは、軽快感や操縦性といった走行性能の面でも有利になる。

「経済性と利便性のバランス」が時代のニーズを捉えるか

 昨今の物価高騰の煽りを受けて、スーパーハイトワゴンは今や「乗り出し200万円オーバー」が当たり前であり、ターボ付きモデルで少しばかりオプションを追加しようものなら、200万円台後半も覚悟しなければならない。

「軽が高すぎる」という声もしばしば聞かれるなか、ムーヴのように「乗り出し100万円台に収まるスライドドア」を望んでいた層は多いのではないか。もちろんムーヴであってもグレードや装備を充実させればスーパーハイト系との価格差は小さくなっていくが、最低価格の低さはやはり大きな強みになる。

写真はイメージ ©years/イメージマート

 ちなみに一般社団法人日本自動車工業会が2023年度に実施した「軽自動車の使用実態調査 」を見ると、軽を所有する世帯の54%が普通車を併有している。つまり軽のニーズの半分以上は、「セカンドカー」としてのものなのだ。

 これをふまえると、たとえば「家族で出かけるためのミニバン」が別にある世帯なら、セカンドカーについては「スライドドアさえあれば安い方がいい」と考えても不思議はないだろう。