「軽は危険」は本当なのか

 ただ現実問題として、軽一台で長距離のお出かけまでを済ませようと考えたときに、安全面が気になる人は多いかもしれない。

 実際のところ、「軽と普通車(登録車)でどのくらい事故による死傷率が変わるのか」を直接的に示すデータは少ない。しかしいくつかの研究や資料を見ると、やはり「軽の安全性は普通車と変わらない」とするのは難しそうである。

 たとえば軽と普通車とで院内死亡率や重症度を比較した大野雄康氏らの研究(*1)では、自動車乗車中の事故による入院後、院内死亡率は軽自動車群で4.0%、普通車群で2.6%と、1.5倍ほどの上昇が見られる。

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写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 また軽自動車群では「頭頸部、胸部、腹部、骨盤、四肢」における重度外傷および傷害リスクが高くなることも指摘されている。

 ここでは割愛するが、車両重量ごとに死亡重傷率を比べた研究調査など、その他の機関による研究や発表においても、「車体が軽いほど乗員へのダメージは大きくなりやすい」という傾向は見て取れる。

用途に応じて選びつつ、リスクは最小限に

 そうは言っても、「子連れはみな重くて安全な車に乗るべき」というのは現実的ではない。とくに低い速度域での近距離移動がメインなのであれば、日常の利便性や経済性に優れる軽を選ぶのも合理的だろう。

 そもそも事故時の死傷率だけを考えるなら、子どもを自転車に乗せることもNGになる。重要なのは場面に応じて、リスクと利便性のバランスを取っていくことだ。

 もし軽自動車である程度の長距離移動もカバーするのであれば、購入の際に衝突安全性の試験結果などもチェックしておくとよいだろう。なるべく自動ブレーキなどの先進安全機能が新しく、充実したモデルを選ぶことも大切だ。

 繰り返しになるが、車の違いよりも大事なのはチャイルドシートである。JAFによる実地調査 では、6歳未満を乗せた車のチャイルドシート使用率は8割に満たず、さらにチャイルドシートを使っていた車でも、適切に取りつけられていたケースは7割に満たなかったという。チャイルドシートを正しく使えている保護者は、半分ほどしかいないのが実情なのだ。

 子育てのなかで「楽に車が使えること」の意義は計り知れない。しかし同時に、子どもを車に乗せるときは、その命を危険にさらす可能性を認識し、リスクを最小限に抑えられるよう努めることが重要である。

(*1)Ono Y, Uzawa T, Sugiyama J, Tomita N, Kakamu T, Ishida T, et al. (2025) “Comparison of survival outcomes and anatomically specific severe injuries following traffic accidents among occupants of standard and K-car vehicles: A retrospective cohort study at a teaching hospital in Japan.” PLoS ONE 20(2): e0318748. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0318748

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