高齢化だけではない…ハンター減少の根本原因

 さて、そんなクマ駆除の中心となる肝心のハンターも高齢化が進み、年々減少、そのせいで、シカやイノシシとともに、ますますクマの個体数は増えた。

 餌となる木の実などもサルなどに食われ減少、かわりに農作物や人を襲い、クマ被害が増えるという悪循環に陥っているのである。

 なぜ、その肝心のハンターの人口が減少しているかというと、高齢化のほかにも様々な原因がある。

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 ハンターの多くが趣味や副業に過ぎないにもかかわらず、駆除に駆り出されれば、その間仕事ができないうえ、報酬もスズメの涙。狩猟だけに限れば全くの無報酬どころか、足代、弾代も全部ハンター持ちなのは不肖・宮嶋が先述したとおり。

 さらに相手がクマやヒグマ、イノシシになれば命がけとなる。1発で仕留めなければ、パニックに陥ったクマに逆襲される恐れもある。

狩猟の現場は命がけのため、日頃からの射撃場での練習も欠かせない

 ちなみにクマの急所は脳か脊髄と言われるが、頭蓋骨は固く弾が弾かれる恐れもあるし、標的となる脳や脊髄も小さいことから、比較的大きな胸部を狙うよう薦められている。ただ胸部に着弾すると内臓を損傷させるので、食肉部が少なくなってしまう恐れがある。

複雑で難しい狩猟免許の取得

 しかし、ハンターの成り手が少ないのはそれだけでない。銃の所持やその管理、さらに狩猟免許の取得だけでも恐ろしいほど複雑で難しいのである。それが若いハンターが増えない最大の理由であろう。

 豊臣秀吉の刀狩り令以来、民間人が武器を所持することを厳しく制限することにより、一揆や反乱、今やと治安を維持し、テロや政権転覆を押さえこんできた歴史があるからであろうか。

 別にアメリカのような「銃社会」が理想と言うわけではない。ただ、この日本は「市民」が強力な武器を所持しそれらで動物を「殺す」ことを「趣味」にする者たちに、強いアレルギーを持っているようである。そうした価値観も、若いハンターが増えない一因だろう。

撮影=宮嶋茂樹

次の記事に続く 自衛隊員は“襲われてから”でなければ反撃不可…現役ハンターが首を傾げる「クマを撃つ」までの高すぎるハードル

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