“不良少女”イメージからの脱却
“不良少女”のイメージで売り出したが、素顔はまったく異なっていた。口数が少なく、物静か。それまでにも三原順子(じゅん子)をはじめ、不良(ツッパリ)のイメージで売り出したアイドルは複数いたが、中山は早々にそのイメージから脱却する。
1985年12月に公開された映画『ビー・バップ・ハイスクール』は、不良少年たちを主人公にしたアクション活劇。不良少年を演じる仲村トオル、清水宏次朗らは一般公募のオーディションで選ばれたが、中山だけは制作側のオファーによって起用された。無名の俳優をフィーチャーした作品に、デビュー間もないとはいえ彼女の人気と知名度がどうしても必要だったのだ。
当初は不良少女役でオファーが来ていたが、イメージチェンジを考えていた山中が東映に直談判して、優等生のお嬢様・泉今日子役に変更してもらった。しかし、撮影はハードだった。共演者の小沢仁志は自身のYouTubeチャンネルで、那須博之監督に「本気で叩け」と命じられたことや実際に叩いたこと、叩かれた中山が撮影後に号泣して「映画なんか大っ嫌い!」と叫んで帰ってしまったことを明かしている(2022年12月25日)。その言葉がどこまで本心だったかはわからないが、たしかに結婚による休業以前はキャリアの長さのわりに出演映画の本数がそれほど多くなかった。
わずか1年でトップアイドルに
公開された『ビー・バップ・ハイスクール』は大ヒットを収める。リサーチによると、併映作『野蛮人のように』の薬師丸ひろ子より中山の人気のほうが高かったという。同月には『毎度おさわがせします』の第2シリーズがスタート。高視聴率を記録したが、すでに複数のCM契約を結んでいたため、前作のような中山の過激な露出シーンは一切なかった。
大晦日にはレコード大賞の最優秀新人賞も獲得。中山美穂は名実ともにトップアイドルの一員となった。『毎度おさわがせします』第1話放送から、ここまでわずか1年の出来事である。(つづく)
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