歌手、俳優として活躍した中山美穂が亡くなって早くも1年が経つ。トップアイドルとして時代を駆け抜けた中山美穂だが、俳優としても瞠目すべき実績を残している。ここでは中山美穂がデビューから結婚で芸能活動を休止するまでの期間に出演したドラマ、映画をあらためて極力すべて目を通した上で、彼女がどんな作品でどんな役を演じてきたか、それがどんな意味合いを持っていたかを考えてみたい。(全5回の4回目/続きを読む)
※以降、作品の展開や結末に触れている場合があります。
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中山美穂のキャリアの中で決定的な作品は岩井俊二監督の映画『Love Letter』である。しかし、この作品と出会うまでにはもう少し時間を要する。
充電期間を経て1994年1月に放送された『新春ドラマスペシャル’94 あおげば尊し』(フジテレビ系)は教師をテーマにしたオムニバスドラマ。中山は第1話「2年C組の奇跡」に主演した。役柄は明るく生徒思いの教育実習生。代用教員(本格的ドラマ初出演の内村光良)とともに、バブル崩壊で親が負債を抱えた少女(ともさかりえ)の心を開くというストーリーだった。
1994年1月スタートの『もしも願いが叶うなら』(TBS系)は、天涯孤独の女性が血のつながりのない3人の兄と同居するコメディードラマ。脚本は遊川和彦氏。
兄役の浜田雅功、浜崎貴司、岡田浩暉だけでなく、うじきつよし、渡辺満里奈という専業俳優ではない出演者が揃った作品で、知名度と安定した演技力のある中山は企画成立のために必須だった。哀しみを隠し、明るく健気に生きている女性という役柄は中山の得意とするもの。幼少期に苦労を重ねた彼女の実人生とも重なる部分も大きい。ドラマは浜田とのハイテンションな掛け合いが人気を呼んだ。
1995年1月スタートの『For You』(フジテレビ系)は3年ぶりの月9ドラマ。中山は初めてのシングルマザー役を演じている。シングルマザーかつ派遣社員の女性が置かれている苦境がよくわかる作品だった。髪型がショートなのは『Love Letter』の直後に撮影したから。脚本は中園ミホ氏。平均21.5%と高い視聴率を記録した。


