風変わりな銀行強盗カップルが逃げ込んだケーキ屋で、母親に捨てられた兄妹のためにクリスマスケーキを作るというハートウォーミングでビターなストーリー。カット割りや画角、カラーリングなどはPVのような仕上がりになっている。

 久々(といっても1年半ぶり)の連続ドラマは1996年10月スタートの『おいしい関係』(フジテレビ系)。槇村さとる氏の少女マンガが原作の「月9」ドラマだった。相手役は『愛という名のもとに』でブレイクした唐沢寿明。

『おいしい関係』(1996年、フジテレビ系)

 父の死によってすべてを失った美食家の女性が、偶然立ち寄ったレストランでコンソメの味に感動し、毒舌のシェフ(唐沢)に厳しく当たられながらシェフを目指して奮闘するというストーリー。哀しみを背負いつつも健気に前向きという中山が得意とする役柄だった。最終回の視聴率は25.5%を記録している。

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 プロデューサーの小林義和氏は、若い頃に『な・ま・い・き 盛り』のスタッフを務めており、中山のファンクラブ向けビデオの演出補を務めていたこともあった(フジテレビ『救命病棟24時』中村正人さんスペシャルインタビュー)。

ペースを落として、出演作品を選ぶように

 竹中直人が監督と主演を務めた映画『東京日和』は1997年10月公開。写真家・荒木経惟夫妻をモデルにした物語で、中山は早逝した妻・ヨーコを演じている。『Love Letter』を観て感動した竹中が中山にオファーした。中山にとっては願ったり叶ったりのオファーだっただろう。製作はフジテレビとバーニングプロダクション。

映画『東京日和』(1997年公開)

 一風変わった猫のような女性を中山が儚げに演じている。中山にとっては新境地の作品だった。作品を見た岩井俊二監督は「美穂ちゃんに一番演じてほしい役柄でした」と語っている(映画.com 2025年12月1日)。松たか子が本作で映画初出演。中山とは後に『ラストレター』で共演している。

『Love Letter』を大きな自信にした中山は、ペースを落として自分なりに出演作品を選ぶようになっていた。そして、もう一つの代表作と出会うことになる。1998年の『眠れる森 A Sleeping Forest』(フジテレビ系)だ。(つづく)

次の記事に続く キムタクと共演した“忘れられない作品”、結婚・パリ移住も経て…「おばあちゃんになるまで演じられたらな」中山美穂(享年54)が語っていた“芝居への思い”

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