歌手、俳優として活躍した中山美穂が亡くなって早くも1年が経つ。トップアイドルとして時代を駆け抜けた中山美穂だが、俳優としても瞠目すべき実績を残している。ここでは中山美穂がデビューから結婚で芸能活動を休止するまでの期間に出演したドラマ、映画をあらためて極力すべて目を通した上で、彼女がどんな作品でどんな役を演じてきたか、それがどんな意味合いを持っていたかを考えてみたい。(全5回の5回目/はじめから読む)
※以降、作品の展開や結末に触れている場合があります。
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仲村トオル、木村拓哉らと本格ミステリーに挑戦
1998年10月スタートの『眠れる森 A Sleeping Forest』(フジテレビ系)は、野沢尚氏の原作・脚本によるミステリードラマ。中山美穂にとって初めての本格的なミステリーへの挑戦となる。記憶と脳のメカニズムやアダルトチルドレンなどのテーマに挑んだ意欲作で、『ロングバケーション』などで人気絶頂だった木村拓哉との共演も大きな話題を呼んだ。
企画の山田良明氏によると、『眠れる森』は「1クール連続のミステリーは視聴者の興味をつなげるか」を課題に「テレビドラマの頂上」を目指したもの(『月刊民放』1998年12月)。当時1話完結のミステリードラマは多かったが、1クール連続の作品はほとんど例がなく、1995年の『沙粧妙子 -最後の事件-』(フジテレビ系)がカルト的な人気を得ていたぐらいだった。本作はインターネットも活用されており、考察ドラマの走りだったともいえる。伏線が隠されていたオープニングの演出も話題となった。
最終回は視聴率30.8%超えに
中山が演じたのは、恋人・輝一郎(仲村トオル)との結婚を目前に控えている女性・実耶子。幼い頃に交通事故で家族を亡くしたと思い込んでいたが、実は彼女は一家惨殺事件の生き残りだった。森で出会った謎の男・直季(木村)につきまとわれるが、恋人と直季の間で心は揺れ動いていく。やがて健気さと無垢さを持った実耶子が、自分の本当の過去を知り、真犯人に追い詰められていく姿を演じきった。
謎が謎を呼ぶ緻密な展開、途切れない緊張感、当時の社会問題を扱った時事性、人間が抱える闇を描くストーリーが俳優陣の熱演と渾然一体となり、最終回は視聴率30.8%を超える大ヒットとなった。中山、木村という人気タレントを揃えながら、いずれも過去に演じたキャラクターに頼らず、独自の作劇を貫いた点も高い評価を得た。

