歌手、俳優として活躍した中山美穂が亡くなって早くも1年が経つ。4月22日に東京国際フォーラムで開催された「お別れの会」には、芸能関係者約800人とファン約1万人が参列した。まさに国民的スターと言っても過言ではないだろう。
トップアイドルとして時代を駆け抜けた中山美穂だが、俳優としても瞠目すべき実績を残している。80年代から90年代、00年代にかけて、数多のドラマに主演し、いずれも高視聴率を獲得。主演した映画『Love Letter』は日本のみならずアジア各国で社会現象を巻き起こした。
ここでは中山美穂がデビューから結婚で芸能活動を休止するまでの期間に出演したドラマ、映画をあらためて極力すべて目を通した上で、彼女がどんな作品でどんな役を演じてきたか、それがどんな意味合いを持っていたかを考えてみたい(目を通した作品、ここで触れる作品はすべてではない)。(全5回の1回目/続きを読む)
※以降、作品の展開や結末に触れている場合があります。
14歳で“鮮烈デビュー”を飾った『毎度おさわがせします』
デビューは鮮烈だった。モデルとして活動していたものの、オーディションに落ち続けて苦渋を味わってきた中山が、14歳のときに掴んだチャンスが『毎度おさわがせします』(TBS系)だ。性への興味を膨らませる中学生たちと、それぞれの親たちが織りなすコメディードラマである。
オーディションは、マネージャーの山中則男氏がパチンコ帰りに渋谷の路上で偶然出会った元部下から知らされたものだった(『中山美穂 「C」からの物語』青志社)。この偶然がなければ、その後の中山美穂はなかったかもしれない。オーディションには「不良少女を絵に描いたような出で立ち」で臨んだと言われているが、実際には髪を黒く染め直している。白いマニキュアが残っていたので山中は爪を隠すように指示したが、中山は意に介さなかったという。
起用を決めたのはプロデューサーの阿部祐三氏。決め手は目力だった。一方、山中は中学生の中山がきわどい場面やセリフを演じることを心配し、スタッフにセリフの変更を直訴したがはねつけられてしまう。結局、彼女の「私、スターになりたい。テレビに出たい」という一言で腹を決めた。

