1991年10月スタートの『逢いたい時にあなたはいない…』(フジテレビ系)は「遠距離恋愛」がテーマのドラマ。JR東海の「クリスマス・エクスプレス」キャンペーンと本作によって遠距離恋愛の概念が日本中に広まった。

 大学病院の看護婦役で、芯が強くて自分の意志はしっかり伝える性格だが、全体的に寂しさに耐えている描写が多い。かつての強気でチャキチャキした役柄から、中山自身が言うところの「哀しみを湛えたしっとり系」(『AERA』2010年1月18日号)への移行が進みつつあった。

初の大河出演、主題歌が大ヒットしたドラマも

 1992年には『信長 KING OF ZIPANGU』で初の大河ドラマ出演を果たす。秀吉(仲村トオル)の正室・ねね役で、『ビー・バップ・ハイスクール』を思い出したファンも多いだろう。中山が演じるねねは殺伐とした物語に華やかさをもたらしたが、出番はわずかだった。中山と仲村の組み合わせは後述する『眠れる森 A sleeping Forest』(1998年)へとつながっていく。

ADVERTISEMENT

『ドラマシティー’92』枠の単発ドラマ『アイシテイルと描いてみた』(日本テレビ系)は1992年8月放送。手話をテーマにした作品で、中山の出演作としては異質である。

 父が亡くなって借金を背負い、夢を捨てて就職した女性という役柄。内向的な性格で、自分を愛せず、自暴自棄になっているが、聴覚障害者の同僚(長谷川真弓)と知り合って変化していく。中山が自己肯定感の低い女性を演じることも、作中で変化していく役を演じるのも珍しかった。

 主題歌「世界中の誰よりきっと」がダブルミリオンのメガヒットになったドラマ『誰かが彼女を愛してる』(フジテレビ系)は1992年10月スタート。

大ヒットした「世界中の誰よりきっと」(中山美穂&WANDS、1992年)

 絵画とロンドンを愛する純粋で奔放な女性の役で、これも中山としては珍しい。的場浩司、根津甚八の親子と三角関係になるが、「どちらかを選ぶことはできない」とあっけらかんと話し、握手して去っていく。恋愛ドラマだが、恋愛に縛られない女性を演じたものの、平均視聴率14.8%と中山の主演ドラマとしては低調な数字だった。

「企画成立のために呼ばれるスター」として見られ…

 ドラマの主演俳優として大活躍していた中山だったが、この時期は「企画を成立させるために呼ばれるスター」として見られることも多かった。唯一無二の存在として誰もが認めるスターであるにもかかわらず、演じることに対する中山のストレスは募る一方だった。(つづく)

次の記事に続く 「私は商品」「演じることなんて大きらい」苦悩を抱え…中山美穂が『Love Letter』の試写で泣き崩れた理由

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。