――えっ、どういうことですか?

加藤 私はスナイパー役を演じていたんですけど、もう気持ちが追い詰められちゃって。夢なのか撮影なのか錯覚するぐらいで。もう常に誰かに狙われてるという精神状態になってましたね。

――そこまで追い詰められるんですね。

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加藤 体力的にも精神的にも追い詰められましたね。深作欣二監督は杖をついて歩いていると思いきや、その杖をぶんぶん回すので。その杖でビシビシやられましたね。

――ただ、その深作監督が途中で亡くなってしまいます。そうすると気持ち的にもぽっかり穴が空いちゃうじゃないですか。

加藤 「どうしたらいいんだろう」となりますよね。「撮影をやるの? やらないの?」って。その時は数か月撮影がなかったんですが、他の仕事は入るので一旦忘れてリセットしました。それで数か月後に「新しくストーリーが変わりました」って言われて、「えっ」て(笑)。

©山元茂樹/文藝春秋

役者として本当にいい経験になった深作欣二監督との時間

――息子の深作健太監督がメガホンをとったのでしたね。息子さんになってからは現場は穏やかになったんですか。

加藤 そうですね。そこまで厳しくない。それこそ現場で雑談できるようにはなりました。でも深作欣二監督の撮影期間は、役者としてはすごく貴重な時間だったなと今、思います。それまでは、表面的にしかお芝居を考えていなかったんだなと感じました。

――加藤さんのキャリアの中でもきつい撮影でしたか。

加藤 その時本当に「もう辞めたい」と思いました。撮影がつらすぎて。中にはつらすぎて現場に来なくなっちゃう子がいたりして。そうすると「じゃあ、そいつは撃たれちゃったってことにしよう」となって、それでまた撮影が進んでいくんです(笑)。

――怖いですね。その厳しい環境だと、キャストには一体感ができそうですね。

加藤 映画は藤原竜也さん演じる七原秋也が率いる反政府組織と、政府に送り込まれた生徒たちが戦うんですが、楽屋は一緒なんですよ。ただ敵同士だから感情は複雑で、お互い話しかけちゃいけない雰囲気で殺伐としてましたね。私とタッグを組んでいたのが、真木よう子さんだったんですけど、彼女もまた強い感じだったので。ついていくしかないと思いながらやってました。

 ただ本当にいい経験でした。あの時に比べれば、なんでも楽しくやれるなと思ってました(笑)。

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