こんなに世に残る役だとは思いもせずに…
――えっ、仮面ライダーファムの変身ポーズって加藤さんが考えたんですか。
加藤 そうなんですよ。ファムはモチーフが白鳥で「こういう感じに変身するから」ってイラストをいただいて。それでスーツアクターの方と一緒に「どういうポーズにします?」と相談して決めました。今考えれば、もうちょっと真剣に考えればよかったなとは思うんですけど。こんなに責任感を負う役だったんだなってのは、あんまり考えずにやっていたので。
――確かに、当時はSNSもないですし、女性ライダーの反響もそこまでわからないですよね。
加藤 そうなんですよ。うちの父親に「仮面ライダー? 知っているよ」と言われて「えっ、お父さんも知ってんだ」と驚くくらいの認識だったんですよ。ゲームやアニメファンと特撮のファンって全然別世界なんですよ。
それこそ「スレイヤーズの実写化ですよ」と言われたら「ええ、それヤバいじゃん」と震えたと思うんですけど、本当に知識がなかったので。こうやって後々まで初の女性ライダーですよと言われるとは思っていなかったです。逆に作品の大きさを知らなくてよかったのかなとも思っているんです。「もうこれはすごい、世に残る役だ」と思っていたら、たぶん思うようにはいかなかった気がします。
――仮面ライダーの歴史として今後も永遠に残り続けますからね。
加藤 ねえ。本当にすいませんって思っています。
映画「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌」での過酷な経験
――加藤さんのキャリアにとって分岐点となるお仕事ってどのあたりになりますか。
加藤 はたから見たらドラマ「花より男子2(リターンズ)」であったり、映画「パラダイス・キス」だとか思われるかもしれないんですけれど、映画「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌」ですね。オーディション自体もバトル・ロワイアル状態で「今日はとりあえず東映で体力テストね」って言われて。
――体力テストをするんですか?
加藤 体力テストと言って一日中走らせられるんですよ。私はもう走るのが苦手なので、後ろの方からなんとかついていくと、ほかの出演者が「あっ、君もういいよ。今日は帰って」と言われて、どんどん省かれていくんですよ。
――過酷ですね。
加藤 出演者はみんな吐きながら、げっそりしながらやってました。でも「この作品は生き死にを描くんだから、そういう役作りをしてこないと作品にはならない」と言われて、健康な役者たちが体力と精神力を削ってやっていましたね。当時はもうベッドで半年ぐらいは寝られなくて。

