日本製鉄の橋本英二会長と、『世界秩序が変わるとき』(文春新書)の著者で投資コンサルタントの齋藤ジン氏が「文藝春秋」誌上で対談。橋本会長は米鉄鋼大手USスチールを買収した経緯を明かした。

橋本英二・日本製鉄会長 ©文藝春秋

 買収が成立した2025年6月に至るまで、成功までの道のりは決して平坦なものではなかった。バイデン政権下で対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象となり、2025年1月にはバイデン大統領(当時)がCFIUSの判断を踏まえて、「国家安全保障上の懸念がある」との理由で買収禁止命令を決定。その後も橋本氏は米側との交渉を続け、第2次トランプ政権発足後にようやく許可が下りた。買収を表明してから2年近くが経っていた。

USスチールの工場 ©時事通信社

「トランプ大統領に『絶対に反対』の考えを改めてもらうのは至難の業でした」と振り返った橋本氏。転機となったのは、2025年2月7日、トランプ大統領と石破茂前総理との首脳会談だったと明かした。

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「その直前、私は石破総理に『大統領を説得してくれとは言いません。2つだけ伝えてください』とお願いしました。1つは『買収は大統領の政策とマッチする良い案件ですから、「NO、NO」と言わずによく話を聞いてください』と。もう1つは『CFIUSの審査を公正にやってください』でした」